研究課題/領域番号 |
22570024
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
鈴木 準一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (00291237)
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キーワード | クローナル植物 / 自己非自己認識 / ジェネット / 空間配置 / 競争 / 温室実験 |
研究概要 |
「クローナル植物では、ジェネットの空間配置により個体群のバイオマスや個体内での物質分配様式が大きく変化する」を仮説として提唱し、その仮説の実験生態学的な検討を行った。 地上茎と根からなるラメットと呼ばれる植物体が、地下茎や葡萄枝などの器官を介した栄養繁殖により複数連結する植物を総称してクローナル植物という。クローナル植物では、その構造から、隣り合わせに存在するラメットが同一の遺伝的なクローン(ジェネット)に属する場合もあれば、異なるジェネットに属する場合もある。 もし、隣り合わせに存在するラメットが同一のジェネットに属するのであれば、過度の競争はそのジェネットの適応度を低下させる。そのため、『協調的』な挙動が予測されうる。一方で、隣に存在するラメットが自分とは異なるジェネットに属するのであれば、『協調的』な振る舞いは、自身の適応度を下げる可能性がある。 昨年度のスクリーニングにより選定された候補種である、ホソムギ(Lolium perenne)、イタドリ(Fallopia japonica)、シロツメクサ(Trifolium repens)、ギョウギシバ(Cynodondactylon)、オニシバ(Zoysia macrostachya)、カキドオシ(Glechoma hederacea var. grandis)のうち、シロツメクサ、ギョウギシバ、オニシバ、カキドオシでは、ジェネットの空間配置による物質分配様式の違いは顕著には生じなかった。一方、イタドリでは、物質分配様式による違いが認められた。ホソムギについては、より詳細な検証が必要である。 イタドリで見られた違いは大きくは無かったが、統計的な有意な結果であり、ジェネットの空間配置が物質分配に一定の影響を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イタドリについては、仮説を支持する結果が得られている。また、残りの種については、かならずしも仮説を支持する結果ではないものの、着実に結果が蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
イタドリを用いた栽培実験を再度実施し、結果の確認を行う。ホソムギについては、より詳細な実験を実施する。 ホソムギについては、微細な差の統計的な検討が十分にできるように、十分な反復数を準備する必要がある。
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