配偶者選択による性淘汰と、もう1つの性淘汰である同性間淘汰が、雄の装飾や左右性に与える効果を検討するため、左右不相称の性的二型が顕著で、理想的なモデル生物であるシオマネキ(Uca属)を対象とした野外観察、野外実験、および形態の種間比較を行った。まず、(1)雌の配偶者選択が雄の利き腕の頻度に影響するか否かを検討する実験を行うため、求愛ロボットの作製に取りかかった。この際、海外(オーストラリア)での作製に予想以上に時間がかかることが判明したため、国内でも平行してロボットを作製する準備を開始した。また、実験計画の自由度を高めるため、ロボットとともに3DCGを利用することとした。(II)同性間淘汰が雄の利き腕の頻度を説明するかどうか、という点については、熊本のU.lacteaを対象に、利き腕が同じ雄同士、および利き腕が違う雄同士の闘争のパターンや、闘争が決着するまでに要する時間を比較した。その結果、利き腕の違う雄同士の闘争が長く続く傾向があることが明らかになった。さらに、(III)異性間淘汰と同性間淘汰の相対的重要度を推定するため、雄の体サイズ(甲幅)に対する大型鋏脚の長さ、および体湿重に対する大型鋏脚の湿重を測定し、それらを種間で比較した。平成22年度には、沖縄のU.perplexaやU.vocans、タイのU.annulipesについての計測を行い、求愛行動(waving)が複雑なU.perplexaとU.annulipesの大型鋏脚はU.vocansのそれよりも長く、かつ大型個体では軽いという傾向が認められた。
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