研究概要 |
タマネギバエの羽化時刻の位相前進において地温の温度レベルと温度較差,どちらが相対的に重要であるかを実験的に検討した.その結果,温度レベルとは無関係に温度較差それ自体が羽化時刻の位相前進を引き起こすことを確認した(Tanaka&Watari,2011). 砂の温度がハエの羽化成功率に及ぼす影響を明らかにするために、さまざまな温度の砂のなか1cmに新成虫を埋め、その後の羽化成功率を調べた,その結果,砂温が43℃を超えると地上に脱出できないことがわかった.この結果は,日中の高い砂温がタマネギバエの羽化時刻の決定に大きく影響することを示唆している, 短期間ではあったが新成虫が曝される微気象を本種の自生地で計測した.得られた結果のうちで特筆すべきは,地下1cmであっても,地温がハエの高温耐性限界(42℃)に達することが確認できたことである.体が小さいため,ハエ類の体温はすぐに環境温度と同じになる.このことは昼間の高い地温がハエの地上への脱出の障害となっている可能性を示唆している。 天敵類の日周期活動については,アリ類(クロヤマアリ)とクモ類(オオアシコモリグモ類)について予備的なデータが得られた.いずれも昼行性であり,タマネギバエの潜在的捕食者になりうることが示された. 温度較差を用いた羽化時刻の補正(温度較差反応)の普遍性を確認するために,タマネギバエと同様に土中で蛹化するシリアカニクバエの羽化時刻を異なる温度較差条件下で調査した.その結果,シリアカニクバエも温度較差を用いて羽化時刻の補正を行うことが明らかになった(Miyazaki et al 2011),
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