植物を対象として同時雌雄同体が進化する条件を示したKakehashi & Haradaの数理モデルについては、本助成金の申請後、交付に至るまでの間に既に検討を行い、断続的な繁殖期を持つ植物に限らず、連続的に繁殖する動物においても同様に適用できることを確認し、2009年度の日本動物行動学会ラウンドテーブルなどで発表した。 サラサウミウシが毎回の交尾後にペニスを自切し、1日以内に「次のペニス」を準備できる仕組み(形態的特徴)については、2009年度に研究協力者の関澤彩眞(大阪市立大大学院)が解明していたが、同属でやはりペニスを自切する種(シラナミイロウミウシなど)としない種(コールマンウミウシなど)の形態的な違いについては未解明であった。そこで、これらの種及び、近縁の黄色ウミウシ属でペニスを自切するモンジャウミウシについて、生殖器の構造を詳細に調べたところ、自切する種はサラサウミウシとよくにた構造を持ち、自切しないの構造はまったく異なっている(ペニス部分が短い)ことがわかり、国内外の学会でこの結果を発表した。 サラサウミウシにおいて開発していたマイクロサテライトマーカーについては、多型を持つ7つのプライマーを得たが、このうち多型が多く、ピークが明瞭に出る2つのプライマーを用いて、3卵塊の父性判定を先行的に実施してみたところ、3卵塊ともすべて2個体(以上)の父親が存在していた(野外において2回以上交尾してから産卵した)ことが判明したが、これは当初の予測とよく一致している。また、人為的に交尾させた最終交尾個体の父性への貢献は平均よりもかなり低く、先に交尾した個体が有利であることを示唆していた。これは一般にウミウシが精子を受け取るために2つの嚢(交尾嚢と受精嚢)を持つことに関係しているのではないかと考えられた。
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