研究課題/領域番号 |
22570030
|
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
南 正人 麻布大学, 獣医学部, 講師 (10548043)
|
キーワード | 生態学 / 行動生態学 / ニホンジカ / 生涯繁殖成功 |
研究概要 |
個体識別した動物の一生を追跡し、繁殖成功度だけでなく、適応度まで測定し、それに影響を与える要因を解明する研究は、その生物の進化を理解する上で重要であるばかりでなく、進化現象そのものの理解を深めることになる。しかしながら、個体識別と追跡調査の継続が困難であるという点から、野外での識別個体の継続調査は難しく、一部の大型哺乳類以外では行われてこなかった。本研究では、1989年から個体識別され、長期継続調査を継続している宮城県金華山に生息する野生のニホンジカ(Cervus Nippon)の集団を対象に、形態や体重を指標とした栄養状態、さらに繁殖行動や繁殖成功を検討し、どのような個体の適応度が高いのかを明らかにしようとするものである。 野外調査に関しては、平成23年度は震災の影響で調査地が被災した為に調査に影響が出たが、四季にわたって調査対象群の生死と出産の確認を行った。分析については、平成22年度に整理できた一元化されたデータベースを元に年ごとのオスの社会的地位と交尾成功について分析し、なわばりをもつ社会的地位の高い個体の繁殖成功度が高く、遺伝的な解析からもそれを裏付けることができた。今後は個体別の生涯に繁殖成功について整理するとともに、オスの繁殖コストについて検討する。これについては、投稿論文準備中である。社会的地位のシンボルである角に関して、これまで個体識別してサンプリングした角の形状について、計測・測量と整理を行った。また、平成22年度に分析を行った妊娠育児に対する母親の投資コストについて、平成23年度には学会発表と論文発表を行った。さらに、出産後の母親の投資である授乳について、個体ごとに授乳時間を整理し、母親の投資配分の観点と母子の利害対立の観点から分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一元化したデータベースに若干のミスが見つかり、その補正に時間が取られたこと。また、計測やフィールドノートからの一次整理に手間取っている。
|
今後の研究の推進方策 |
行動圏の整理、角の計測・計量、授乳時間の個体別の整理等が終わったので、今年度は分析と論文執筆にエネルギーをかけることができるので、研究計画の変更は必要ない。
|