研究概要 |
2012年6-7月に兵庫県神戸市において、4つのスーパーコロニー(Kobe A、Kobe B、Kobe C、Japanese main)採集した。これらのコロニーを用いて、集団敵対行動の観察を行ったところ、10個体の抽出がJapanese mainとKobe Bの場合、他コロニーの1個体に対して、のべ攻撃個体数および、同時に攻撃したワーカー数が、Kobe AとKobe Cに比べ多い傾向があった。また、24時間飢餓状態においたミニコロニー(ワーカー数35~55個体)の採餌行動を調べた結果、KobeAが他コロニーに比べ、餌発見に要する時間が長く、採餌個体数の割合が少なかった。一方、KobeCは採餌個体数の割合が、他コロニーに比べ有意に多かった。 また、2012年10月にスペインバルセロナでアルゼンチンアリの2つのスーパーコロニー(European main, Catalonian)の採集を行った。European mainは、Japanese mainと同じミトコンドリアDNAハプロタイプを有し、敵対行動を取らず同じスーパーコロニーに属する。現地で各3コロニーを採集し、逃避行動および集団敵対性行動を観察したところ、両スーパーコロニーともに逃避行動はほとんど見られず、複数の個体が攻撃するなど強い攻撃性がみられた。 近年、「個体群内の行動特性の違い (animal personality)」が注目されている。パーソナリティとは、異なる環境や時間を経ても持続する、各個体がもつ行動の違いをいい、外来種では、侵入・定着の成功に寄与する行動特性を持つ個体が有利であることが知られている。アルゼンチンアリは、コロニーが1つの繁殖ユニットとして機能するため、コロニーレベルで行動特性に淘汰がかかり、特定の「コロニー・パーソナリティ特性」が侵入成功に貢献している可能性が示唆された。
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