研究概要 |
地球温暖化による海水温の上昇が沿岸性魚類の繁殖に及ぼす影響を解明するため,フィールド観察により繁殖状況を確認するとともに文献等から繁殖データを集積することにより,過去から現在までの繁殖期の変化を明らかにして,将来の繁殖期の変化を予測することを目的とする.研究初年度の平成22年度には,千葉県勝浦・館山,東京都八丈島,静岡県富戸,高知県柏島,鹿児島県屋久島の合計6カ所の観察区を設定して,指標魚(5科14種)のフィールド観察を11月から3月にかけて行った ベラ科魚類では,熱帯性指標種のホンソメワケベラが全ての観察区で成魚サイズの個体が確認された.分布北限にあたる千葉県では最低水温期に生息が確認されたことから,越冬個体が翌年の高水温期に繁殖する可能性が示唆された.アカササノハベラでは1月に八丈島において産卵行動が確認された スズメダイ科魚類では,熱帯性指標種のクマノミが千葉県を除く観察区で成魚サイズの個体が確認された.分布北限にあたる千葉県では最低水温期に生息が確認されなかったことから,越冬個体による翌年の繁殖可能性の低いことが示唆された 過去の観察記録によると,ホンソメワケベラやクマノミなどの熱帯性魚類は,分布北限の千葉県では越冬できる年とできない年があり,これにはその年の加入量と低水温期の生残率が関与し,翌年の繁殖に大きな影響を与えていると考えられた フィールド観察の際,観察区内の水深5~10mの海底に海水温計測用のデータロガーを設置した.1年後にロガーを回収して,水温変動と繁殖との関係を解析する予定である
|