筑波大学内に植栽されているポプラ(P.nigra var.italica)の枝の切り口に真空ポンプを繋ぎ、-0.08MPaで一定時間吸引して導管液を二年間に渡って採取し、根で吸収生産された無機/有機成分の変動を調査した。根の生長は地上部の生育が盛んになる6月頃から活発になることが知られているが、先行研究において、導管液にはグルタミンやグルコースおよびKやCaが、地上部が芽吹く前の早春(2~3月)に豊富に存在していた。さらに、導管液のホルモノーム解析の結果、アブシジン酸(ABA)やサイトカイニン(tZR)も、早春の導管液に最も多く含まれており、特にABAはホルモンの中で最も多く(20nM)含まれていた。一方、導管液に含まれるタンパク質は他の成分に先がけて冬期から(12~3月)導管液に豊富に存在していた。次に、屋外の自然条件下において栽培したポプラ(P.maximowiczii:ドロノキ)の根を年間を通して採取し、根における生長(細胞分裂)および導管液成分やホルモンに関わる各種遺伝子の発現を調べた。細胞分裂のマーカーであるサイクリンB(CYCB)の発現は、根の生長の盛んな6月にピークを示したが、水輸送に必要な細胞膜アクアポリン(PIP)と、ABA合成の鍵酵素である9-cis-epoxy-carotenoid dioxygenase(NCED)は、それに先立つ早春にピークを示した。さらに、ポプラの導管液に最も多く含まれる25kDaのタンパク質(XSP25)を質量分析計を用いて解析し、遺伝子を同定するとともにその発現の年間変動を調査したところ、。タバコBY-2培養細胞やコムギでABA誘導性の機能未知タンパク質(PR protein)として記載されているBSP(basic secretory protein)と高い相同性を有しており、その根における遺伝子発現は冬期(12~2月)に高く、9月の植物の根に10^<-5>M ABAを投与すると発現が強く誘導されることが判明した。
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