研究課題/領域番号 |
22570034
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 忍 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70196236)
|
キーワード | ポプラ / 導管液 / 根 / タンパク質 / ABA / サイトカイニン / グルコース |
研究概要 |
落葉性の木本植物は生長と休眠のサイクルを有し、休眠の誘導や解除には日長や温度、アブシジン酸(ABA)やジベレリンの関与が知られている。ポプラの導管液に含まれるKやCa、グルコースやタンパク質の濃度に年周期性が示されたことから、本研究ではドロノキ を用いて輸送体や導管液有機物質に関わる遺伝子の発現解析を行った。既知のK輸送体と相同であるPmGORK-like1は地上部において短日処理後期から低温期まで発現が誘導され、根では短目処理開始以降恒常的に発現していた。一方、Ca輸送体の相同遺伝子であるPmACA-like1は地上部、根共に短日処理により誘導され、低温によりさらに強く発現した。またポプラで同定された導管液タンパク質の相同遺伝子(PmXSP24,PmXSP25)の発現も短日と低温により誘導されていた。長日環境にある植物へのABA添加や低温処理によりこれらの遺伝子の発現制御機構の解析を行ったところ、それぞれの処理により地上部においてはPmACA-like1が、根においてはPmGORK-like1が顕著に誘導されており、地上部と根では応答が異なることが示された。以上から地上部と根の協調的な環境適応にはABAや低温処理のみでは不十分であり、短日環境によって誘導される全身的な制御機構が関与していると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポプラ導管液の成分変動を解析し、論文として発表できたので。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)XSP25およびXSP24、カルシウムおよびカリウムの輸送体のプロモーター領域のクローニングを進める。(2)これらのプロモーターの下流に遺伝子発現の可視化マーカーとして発光タンパク質(GFPおよびRFP)およびGUSを連結したコンストラクトの作成を進める。(3)アグロバクテリウムを用いてハイブリッドアスペンに導入する。(4)無菌寒天培地上での栽培や水耕栽培において、遺伝子発現を蛍光を指標に連続的にモニターし、環境要因と遺伝子発現との関連を明らかにする。(5)根とシュートを別々に低温処理するとともに、ジベレリン合成阻害剤(パクロブトラゾール)やアブシジン酸合成阻害剤(アバミン)を地上部および根に分けて投与し、根と芽の休眠と解除および遺伝子発現を解析する。(6)今までの鉢植えのドロノキを使用した人工気象室内における年間サイクルの実験に加え、寒天培地を用いた無菌ポット栽培のトリコカルパを用い、同様の実験を行う。
|