研究概要 |
落葉性の木本植物は生長と休眠のサイクルを有し、休眠の誘導や解除には日長や温度、アブシジン酸(ABA)やジベレリンの関与が知られている。ポプラの導管液に含まれるKやCa、グルコースやタンパク質の濃度に年周期性が示されたことから、本研究ではドロノキを用いて輸送体や導管液有機物質に関わる遺伝子の発現解析を行った。既知のK輸送体と相同であるPmGORK-like1は地上部において短日処理後期から低温期まで発現が誘導され、根では短目処理開始以降恒常的に発現していた。一方、Ca輸送体の相同遺伝子であるPmACA-like1は地上部、根共に短日処理により誘導され、低温によりさらに強く発現した。またポプラで同定された導管液タンパク質の相同遺伝子(PmXSP24, PmXSP25)の発現も短日と低温により誘導されていた。長日環境にある植物へのABA添加や低温処理によりこれらの遺伝子の発現制御機構の解析を行ったところ、それぞれの処理により地上部においてはPmACA-like1が、根においてはPmGORK-like1が顕著に誘導されており、地上部と根では応答が異なることが示された。今年度は上記結果の再現性を取る目的で、昨年度と同様の実内実験を行い、再現性の有るデータを取得した。また、ゲノム解読が終わっているトリコカルパを寒天培地を用いて透明ポット中で無菌的に栽培し、上記と同様の処理によって休眠芽の形成と休眠解除が起こるかどうかを検証するとともに、その際、根の成長にどのような変化が生じるか、ポットの底面から写真を撮影して調べた。その結果、無菌ポット中でも休眠芽の形成と休眠解除が正常に起こること、根の成長は休眠芽が形成されても継続し、低温に移すと止まることが判明した。
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