シロイヌナズナのLer系統にはcr1変異体の表現型を抑圧するサプレッサー遺伝子が存在していた。現在このサプレッサー遺伝子のマッピングを進めている。また、シロイヌナズナCRL遺伝子プロモーターで転写されるCRL-YFP遺伝子(PCRL-CRL-YFP)発現植物を作製し、CRL-YFPが葉緑体包膜以外にも、核周縁部、細胞質内の小胞、小さなドットの構造体に存在する事を確認した。様々な領域を欠失したCRLとGFPあるいはYFPとの融合タンパク質遺伝子を発現する形質転換シロイヌナズナを作製し、CRLタンパク質の細胞内局在に必要な領域を解析した。その結果、CRLタンパク質が葉緑体包膜および、小胞、ドット状の構造体に局在するためには、アミノ末端側の133アミノ酸残基が必要である事が明らかとなった。この領域には、膜貫通領域、ゴルジ体から小胞体へ輸送されるタンパク質に見られる共通配列、小胞体から細胞外へ分泌されるタンパク質に見られる共通配列が存在した。これらのどの共通配列を含む領域が欠失しても、CRLタンパク質が葉緑体外包膜には局在しない事が示唆された。この結果は、膜貫通領域とそれに隣接する塩基性アミノ酸とが、葉緑体外包膜へのタンパク質局在に必要十分であるという従来の報告とは異なるものである。また、酵母ツーハイブリッドスクリーニングによって得られたCRLタンパク質と相互作用するタンパク質の細胞内局在を、シロイヌナズナ細胞における一過的発現によって調べた。その結果、2種類のCRL相互作用タンパク質は細胞質に局在した。これらのタンパク質がCRLタンパク質の細胞質ドメインと相互作用するかは今後検討する予定である。
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