研究概要 |
環境変動に即したプリン分解代謝の二元的な植物生理機能(通常条件下での成長維持,ストレス下での環境適応)を実証し,その制御機構を解明することを目的に研究を進め,以下の結果を得た。 1.成長維持に資する代謝機能の実証:プリン分解機能の抑制により正常な成長に支障をきたしたシロイヌナズナRNAi株では,格段に窒素含量が高いプリン分解の初発生成物(尿酸;C:N=5:4)の濃度が野生株と比較して著しく低下していた。尿酸の分解で最終的に生じるアンモニアは窒素同化基質であることから,当該代謝が実効的な窒素栄養再生系として植物の成長維持に恒常的に機能している可能性が示唆された。 2.ストレス適応代謝として機能の実証:これまで無菌植物を用いたin vitro実験系で検証してきたストレス適応代謝としての生理機能について,その確証を得るため,より自然栽培条件に近い土耕栽培系でプリン代謝が破綻したRNAi株の乾燥感受性を検証した。3週齢植物に対して3週間の無給水処理を施した後に再給水した結果,野生株は生育を回復したが,RNAi株は全て枯死した。したがって,プリン代謝がシロイヌナズナの乾燥適応に必要であることが明確に示された。 3.プリン分解代謝の二元的な機能発現を可能とする遺伝子ネットワークの存在証明:ストレスに応答したプリン代謝の転写ネットワークの存在を仮想し,シロイヌナズナの共発現データを用いて,当該代謝関連遺伝子群に一定の相関を示す転写因子の候補遺伝子を探索した。その結果,2つの転写因子候補を見出したが,本年度はそのうちの一つで機能未知のMyb様蛋白質について解析した。タマネギ表皮細胞におけるGFP融合蛋白質の一過的発現解析から,この蛋白質は核に局在することが示された。次にT-DNA挿入変異株の単離を試みたが,その遺伝子破壊は胚性致死をもたらすことが示された。
|