研究課題/領域番号 |
22570046
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高野 博嘉 熊本大学, バイオエレクトリクス研究センター, 教授 (70242104)
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研究分担者 |
武智 克彰 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (70515501)
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キーワード | D-アミノ酸 / コケ植物 / 葉緑体分裂 / オルガネラ / ペプチドグリカン |
研究概要 |
生物ではD-アミノ酸の使用は例外的であり、特に真核生物ではその生理機能はほとんどわかっていない。D-アミノ酸を必須要素とする細菌の細胞壁成分ペプチドグリカンは、細菌に物理的強度を与えると共に分裂時の隔壁形成にも関わる。我々はヒメツリガネゴケに葉緑体型ペプチドグリカン合成系が存在しており、これが葉緑体分裂に関わることをPbp等の合成系遺伝子の破壊実験により示してきた。本研究ではコケ植物葉緑体分裂におけるD-アミノ酸の機能を調べるため、ペプチドグリカン合成系のD-アラニン:D-アラニンリガーゼ(Dd1)のヒメツリガネゴケ相同遺伝子の解析を行った。ヒメツリガネゴケゲノムデータベースには3つのDd1遺伝子が登録されていたが、ゲノミックPCRとRT-PCRで増幅されたのは1つだけであり、これをPpDd1とした。PpDd1の予測葉緑体移行配列とGFPとの融合タンパク質を細胞内で発現させたところ、GFP蛍光は葉緑体で観察された。ヒメツリガネゴケで用いることができる遺伝子破壊法を使ってヒメツリガネゴケのPpDd1遺伝子破壊ラインを作出し、このラインを観察したところ、野生型の細胞では45個程度存在する葉緑体が2個まで減少しており、それに伴って葉緑体が巨大化していた。このことは、PpDd1が葉緑体内でD-アラニル-D-アラニン合成を介して業緑体分裂に関与していることを示唆しており、植物においてもD-アミノ酸が機能していることが推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PpDd1選伝子の解析を通して、D-アミノ酸が植物内で生理機能を有していることを明らかにした。今後は、PpDd1遺伝子破壊ラインの解析を進めるとともに、コケ植物におけるペプチドグリカン分解系の機能等の解析も進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2011年に、シロイヌナズナでD-セリンが花粉管伸長に関わることが見いだされたこと(Michard et al.2011,Science)は、植物全般におけるD-アミノ酸の生理機能という意味で非常に興味深い。コケ植物においても、葉緑体分裂以外の現象にどのようにD-アミノ酸が関わっているのかについて、更に研究を進めていきたい。
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