研究課題
1)Gタンパク質αサブユニット(Gα)とBRシグナリングの相関関係BR受容体変異体d61-2とd1-1の2重変異体(d61-2 d1-1)を組織学的に解析した。BR変異体の矮性は、主に細胞長の減少が原因であり、d1-1の簸性は細胞数の減少が原因である。4葉鞘の縦方向の細胞数は、2重変異体において、d1-1がd61-2に対してエピスタテイックであった。第1節間の縦方向の細胞数は、両シグナリングが欠失すると顕著に減少し、複雑な相互作用の可能性を示唆した。外頴の縦方向の細胞数は、D1の働きで説明がつき、BRシグナリングの関与は少ないと判断した。以上を総合的に考察すると、Gタンパク質シグナリングとBRシグナリングは、器官ごとに相互作用の様式を異にする可能性があることが示された。2)Gタンパク質βサブユニット(Gβ)の機能推定Gタンパク質βサブユニット(Gβ)遺伝子(RGB1)の発現抑制個体を作出し、表現型解析を行った。平成23年度は、この発現抑制により異常を示す器官を詳細に調べ、論文として発表した(Plant J.67,907-916)。本研究により、(1)Gβは、Gαとは独立に細胞数を正に制御すること、(2)Gαの完全な消失は背丈が半分になる綾性を示すことに対比して、Gβの完全な消失は致死に至る可能性のあること、(3)Gβの発現抑制は、ラミナジョイント部位や節の枯死を誘発すること、などを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
(ア)3量体Gタンパク質シグナリンとブラシノステロイド(BR)シグナリングの相関関係を、2重変異体を用いて検証した結果、器官ごとに、両シグナリングの相互作用の仕方が異なることを見出した。これにより、Gαに支配される遺伝子発現制御機構は、全器官の共通性を見出す方向の試みより、器官ごとの特徴をまずは調べる必要があるとの結論に至った。この着眼点により、次年度の研究計画を合理的に進められることになった。(イ)GαサブユニットとGβサブユニットは、独立した機能を有すること示せた。この結果により、Gβの機能発現を必要とする器官の同定ができ、次年度の研究計画を合理的に進めることが可能になった。
(ア)Gαが制御する遺伝子群の解明は、葉鞘、節、外頴などの諸器官で、ブラシノステロイドをはじめとする植物ホルモンの影響を、器官ごとに、異なった様式で受けることが示唆された。この知見に立ち、最終年度は、葉鞘に着目したマイクロアレイ解析を行い、葉鞘でのGαが制御する遺伝子群を同定する。(イ)GαサブユニットとGβサブユニットは、独立した機能を有すること示せた。この成果を受け、次年度は、Gβが関与する最適な組織として、葉期別の葉鞘に着目しマイクロアレイ解析を行い、Gβが制御する遺伝子群を同定する。
すべて 2011
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Plant J
巻: 67 ページ: 907-916