イネ3量体Gタンパク質Gα遺伝子欠失変異体d1と野生型の転写産物の量比を、マイクロアレイ法(44kオリゴマイクロアレイ、一色法)にて解析した。幼苗期のイネの生育は、グロースチャンバー(30℃)で、3種類の生育条件、Yoshida培地(12時間明所、12時間暗所)、Yoshida培地(連続光)、1/2 MS培地(12時間明所、12時間暗所)の結果を比較した。幼苗期は、第4葉展開期に着目し、野生型で、伸長が終結した第3葉(L3)と伸長中の第4葉(L4)を比較し、L4で転写量が多い遺伝子(L4/ L3比が共に1.5 以上)を選択した。上記の3種類の生育条件全てにおいて同様の解析をした後、共通して、野生型でL4/ L3比が共に1.5 以上の遺伝子を選択した。圃場で生育させたイネより花芽を採取した。今回は、4~6cmの花芽(野生型)、2~3cmの花芽(d1)用い、野生型(WT)とd1の転写産物量を比較した。 上記、全てに共通して、野生型よりd1で変動する転写産物を探索した。その結果、Gα遺伝子が欠失すると、同調して減少する31個の転写産物を同定した。細胞数を制御する候補として、4種類の転写因子、1種類の細胞周期関連遺伝子、2種類の細胞骨格関連遺伝子、1種類のオーキシン応答遺伝子、3種類の情報伝達関連遺伝子、合計11個を同定した。これらの遺伝子の機能から、これらの遺伝子の発現抑制で、(i) 細胞分裂速度が遅延する可能性と (ii) 細胞分裂方向に異常が生じ、正しい方向への分裂ができないために、縦方向の伸長が抑制され、矮性を示す可能性が考えられた。 本研究の重要性・意義:この候補遺伝子の中から、真にGα遺伝子に依存する転写産物が同定できれば、植物Gタンパク質シグナリングの初めての転写マーカーになり、Gαから標的遺伝子の転写スイッチの開始に関わる因子の解析が可能になる。
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