研究課題/領域番号 |
22570052
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
賀来 華江 明治大学, 農学部, 教授 (70409499)
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キーワード | イネ / キチン受容体 / MAMP / キチンオリゴ糖 / CEBiP / OsCERK1 / 防御応答 / 過剰発現 |
研究概要 |
CEBiPの細胞外領域には2つのLysMドメインが局在し、これらのLysMドメインがキチンオリゴ糖の糖鎖認識に関わると予測されている。我々は、CEBiPのLysMドメインをそれぞれ別々に欠失させた形質転換体を作製し、これらの形質転換体において目的遺伝子の発現を確認することが出来た。しかし、CEBiPに対する特異抗体で検出を行った結果、1番目のLysMドメインを欠失させた変異体では、目的タンパク質の発現を確認したが、2番目のLysMドメインの欠失形質転換体では確認することが出来なかった。しかし、1番目のLysMドメイン欠失した発現タンパク質は、キチンオリゴ糖に対する結合能力が完全に消失していた。このことは、CEBiPの1番目のLysMが、キチンオリゴ糖の結合性に関わっていることが示唆され、2番目のLysMは、タンパク質構造の安定性に関与することが示唆された。このことは、CEBiPの分子内にあるLysMドメインは、異なる機能的な役割があることを示す重要な結果となった。しかし、最近、CEBiP分子において新たにLysMドメインがあることが報告され、このLysMドメインの役割を明らかにするために解析を進めている。 一方、イネのキチンシグナル伝達系に関わるもう一つの受容体であるOsCERK1のキチンエリシターに対する結合性への解析を行った結果、高い相同性をもつシロイヌナズナのCERK1分子がコロイダルキチンに結合する性質をもつとは異なり、OsCERK1はコロイダルキチンに結合しないことを明らかにした。このことは、イネにおいて、キチンエリシターシグナルの受容は、主としてCEBiPが従事していることと、イネとシロイヌナズナ間において、キチンエリシターシグナルの受容形態には大きな違いがあるという重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネキチンエリシター受容体CEBiPにあるLysMドメインには、異なる特性を持つことと、この分子がイネのキチン免疫系のシグナルを受容する主なる分子であることを明らかにした。さらにタバコBY-2過剰発現系に比較して、迅速かつ簡便であるベンサミアナタバコの一過的高発現系を利用したキチン受容体の解析系を確立し、本解析系の使用により、短期間でイネキチンオリゴ糖エリシタ-受容体の糖鎖認識機構の解析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
イネにある2種のキチンエリシター受容体CEBiP及びOsCERK1の糖鎖認識メカニズムの解析において、キチンエリシターに非結合性のCEBiP型及びOsCERK1型分子との関連性を考察し、新たな分析方法を工夫し、LysMドメインとキチンオリゴ糖との結合の関連性について解析を継続する。
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