研究課題/領域番号 |
22570052
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
賀来 華江 明治大学, 農学部, 教授 (70409499)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 植物免疫 / キチン受容体 / MAMP / キチンオリゴ糖 / イネ / CEBiP / OsCERK1 |
研究概要 |
今年度はCEBiPの細胞外領域に新たに見いだされた3番目LysMドメイン(CEBiP-L0)の解析及び新たな手法によるCEBiPのLysMの機能解析を行った。まずCEBiP-L0のLysM部位を欠如させた変異体タンパク質をベンサミアナタバコ発現系において作成したが、しかし目的発現タンパク質を得ることが出来なかった。そこでCEBiP-L0のLysM領域を部分的に欠如させる工夫をすることにより、変異体タンパク質の発現を確認し、このCEBiP-L0の部分的部位の欠如がキチン結合活性に変化を与えないことを見いだした。この結果により、CEBiP-L0はキチンエリシターの結合に関与しないことを明らかにした。またCEBiPの3個のLysMドメインをキチン非活性型分子のものを入れ替えたドメインスワッピングした変異体タンパク質においても、CEBiPの中央に位置するLysMがキチンリガンドの受容に重要な役割を果たし、両側にあるLysMドメインは直接にはリガンドの結合に関与しないが発現タンパク質の構造安定性に重要であること確認し、昨年度の成果を強く支持するものとなった。一方、イネのキチンシグナル伝達系において、CEBiPとOsCERK1が協同して従事することは、明らかであるが、しかしこれまで用いている解析手法ではOsCERK1のキチン結合能の解析に限界があり、新たな手法による解析が必要であった。本年度はOsCERK1の細胞外領域を可溶性タンパク質として、ベンサミアナタバコの葉に一過的に発現させることを試みた結果、可溶性目的タンパク質は夾雑物の少ないアポプラスト画分から回収することが可能になった。この結果は、Biacore等の分析機器による新たな解析手法によるOsCERK1を含むイネLysM型分子の解析に繋がると考えられ、イネのキチンシグナル伝達系の糖鎖認識機構の解明に貢献すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネキチン受容体CEBiPはキチンエリシターの結合に関わる重要で主要な分子であり、そのリガンド認識には細胞外に局在する特定なLysMドメインが関わることを異なる2つの手法を用いて立証した。また、イネにおいてキチンシグナル伝達系には、局在性の異なる2種類の受容体が複合体を形成することが必須であるが、OsCERK1がリガンドの認識に関わるのかについて、現在我々の解析系では限界であった。本研究により精製された可溶性OsCERK1細胞外領域の調製が可能になり、この問題点を克服する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
イネのキチンシグナル伝達系において、キチンリガンドの結合に関わる重要な分子であるCEBiPについて、分子モデリング等の手法を用いて、より詳細なCEBiPの糖鎖認識機構の解明を行う共に、現在の我々の使用している手法においては検出されなかったOsCERK1のキチンリガンドへの結合能の有無についても、新たな解析の手法の開発を含めてその解析を行う予定である。 このことにより、タンパク質構造の異なる2種類のイネ受容体が、どのようにキチンリガンドのシグナルを受容するのかについて解明を行っていきたいと考えている。 また、イネLysM受容体パラログについても、その糖鎖結合性の有無の解析を進める。
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