研究概要 |
本研究ではヒストンアセチル基転移活性ドメインを持つタンパク質をコードするELO3の機能解析により、クロマチンの構造変化を通した葉の形態形成の分子メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。今年度は以下の研究成果を得た。1)ELO3と同じElongator複合体構成因子をコードするELO2とAS2の遺伝解析を行った結果、elo2変異もas2の葉の向軸側的性質の低下を亢進することが明らかとなった。従って葉の形態形成にElongator複合体が関与する可能性が高い。2)マイクロアレイ解析データからELO3下流遺伝子の探索をするため、野生型、as2-1変異体、as1-1変異体のアレイデータ、およびベルギーのグループの野生型、elo3変異体、elo2変異体のアレイデータを用いて、連携研究者の高橋広夫講師が開発したKB-fuzzy ARTという手法で発現量が変化する遺伝子のクラスター解析を行った。AS1/AS2とELO2/ELO3に共通の下流因子を探索した結果、いくつかの遺伝子がas2-1とelo2, elo3変異体で共通に発現量が増加していることが示唆された。一部の遺伝子について、発現量をreal-time PCRで確認し、as2 elo3二重変異体で発現量がさらに上昇する遺伝子を見出した。3)ELO3-GFPキメラタンパク質を発現する形質転換個体の細胞内局在を調べた結果、細胞質で強い蛍光が認められる細胞と核で強い蛍光が観察される細胞の両方が観察された。このような2通りの局在はすでにヒトなどで報告されており、シロイヌナズナでも核と細胞質で異なる機能をもつ可能性がある。
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