研究概要 |
シロイヌナズナのAS2遺伝子、ELO3遺伝子は葉の形態形成の初期において向背軸性の確立に関わる重要な因子で、as2 elo3二重変異体では葉身を欠く棒状の葉を形成する。申請者らはこれまでの解析で、AS2/AS1の直接の標的が葉の背軸側因子の1つETTIN(ETT)で、AS2/AS1によりその発現が抑制される事を示した。また、as1, as2ではETT領域のDNAメチル化パターンが異なり、エピジェネティックな制御が関わる可能性を示した。 今年度は、以下の結果を得た。(1)ETT,ARF4とas2 elo3 二重変異体の遺伝解析の結果、葉が棒になる表現型はETTの影響が大きいが、ARF4もわずかながら関与することが示された。従って、ETTはAS2とELO3の下流に位置すると考えられた。(2)STM:GUSの解析から、as2 elo3では茎頂部のSTM発現領域がわずかに広がり、発現量も上昇していた。(3)AS2、ELO3の下流因子を探すため、千葉大学大学院高橋広夫准教授と連携し、棒状の葉を形成するas2-1 elo3-27 二重変異体と別のas2エンハンサー、as2 eal-1 二重変異体のマイクロアレイの結果でクラスタリング解析を行った。ELO3の標的については、明確な候補が得られなかったが、ETTの下流候補として細胞周期や植物ホルモンに関わる因子に着目し、サイトカイニン合成に関わるIPT3遺伝子、細胞周期制御に関わる因子KRP2, KRP5を選抜した。(4)発現解析の結果、IPT3, KRP2, KRP5は二重変異体でmRNA蓄積量が上昇し、ett変異により、その上昇が抑えられることが明らかになった。以上の結果から、AS2, ELO3, ETTの下流をさらに解析する事で、葉の葉原基初期にサイトカイニン生合成や細胞分裂がどのように関わるかが明らかになると期待される。
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