細胞周期チェックポイントとは、DNA複製作業の中断や染色体の分配異常などといった異常事態に際して細胞周期の進行を停止し、適切な処理が行われるまで次のステップに移行しないようにする機構である。 平成24年度は、前年度までに行った実験を継続し、チェックポイントシグナルによってリン酸化される蛋白質を検索するとともに、DNA複製やDNA修復に働く蛋白質とチェックポイント蛋白質との相互作用を解析することにより、チェックポイントシグナルがゲノム安定性の保持に与える影響を明らかにした。 1)紫外線を照射した植物から総蛋白質を抽出し、リン酸化蛋白質画分を濃縮した上で2次元電気泳動で分画し、ProQ diamondによってリン酸化蛋白質の検出を行った。得られた蛋白質のスポットをトリプシン処理後にPMF分析にかけた結果、熱ショック蛋白質 (HSP) 90などのいくつかの蛋白質がチェックポイントシグナルに関わる新規蛋白質の候補として見出された。 2)チェックポイント応答で働くAtATRIP蛋白質と相互作用するRPA2蛋白質とGFPとの融合蛋白質をシロイヌナズナで発現させた。その結果、GFP-RPA2融合遺伝子は、RPA2の欠損に由来する表現型(dwarf)を相補することが明らかになった。また、GFPをタグとしてGFP-RPA2融合蛋白質の精製を試みた結果、GFP-RPA2とともにいくつかのバンドが検出され、RPA2と相互作用する新規蛋白質である可能性が示唆された。 3)紫外線損傷を乗り越える活性を持つAtREV3およびAtREV1を欠失した植物における相同組換え活性を調べたところ、AtREV1 の欠失では組換え頻度が低下したのに対し、AtREV3の欠失では組換え頻度の上昇が見られた。このことから、AtREV3とAtREV1は相同組換え活性の制御において異なる機能を持つことが示唆された。
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