(1)前年度に作成した組換え体イネ GVG::CKX2 の全ての系統においてCKX2のleakyな発現が見られた。一部の系統では葉鞘や葉面からの発根が観察され、またCK処理によるOsRR6遺伝子の発現誘導が低下したことから、CKレベルが恒常的に低下していると推察された。いもち病検定の結果、対照の非形質転換イネと比較し、顕著ないもち病抵抗性の変化は認められなかった。 (2)シロイヌナズナにおいて、低濃度のCK処理はベト病菌(Hyaloperonospora arabidopsis)に対する抵抗性を低下したが、高濃度では増強したことが報告されている。そこで、イネ幼苗に様々な濃度のCKを前処理し、いもち病検定を行った。その結果、1-100 μMの濃度範囲内ではいもち病抵抗性に対する顕著な影響は認められなかった。 (3)これまでの結果から、CKはイネのいもち病感染初期と後期において異なる作用を持っており、いもち病菌は自身の増殖戦略として感染部位におけるCKレベルを高めるが、一方、宿主植物はそれを感染シグナルとして認識し、SAとの協調作用により、防御反応を誘導すると考えられる。
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