研究概要 |
クレブソルミディウムの形質転換系確立のため,前年度の結果を踏まえて,その問題点を検討した.GFP融合タンパク質をマーカーとしたとき,形質転換体選別の際、細胞の加齢やボンバードメント法で金粒子が撃ち込まれた時に発する自家蛍光が形質転換体を識別する上で大きな障害となった。 そこで以下の検討を行った.(1)自家蛍光像と細胞の状態を比較分類して形質転換体を選別するための判断基準の一つとした.(2)金粒子が小さいほど細胞の傷害も低減され,自家蛍光も弱くなると期待して直径0.6μmのものだけでなく,0.4μmのものも試みた.また、撃込みの条件との組み合わせについても検討した.(3)また,薬剤耐性遺伝子をマーカーとして,植物で広く用いられているアグロバクテリウムを用いた形質転換法も試みた. その結果、(1)については、擬陽性の蛍光像として3つのパターンを同定し,選別の際にそれらの蛍光像を示す細胞を効率よく除外することが可能になった.(2)については、直径0.4μmの金粒子を用い, プロモーターとしてミカヅキモCAB1またはCaMV35Sを用いた条件で,今のところ頻度は低いが,形質転換体と考えられる細胞が得られた.使用したマーカーのGFP融合タンパク質は核内に局在することが期待されたが、実際その通りであった.(3)については,薬剤耐性を示した細胞にマーカー遺伝子が実際に導入されているかどうかをPCR法で調べたが、今のところ検出されておらず、この方法で形質転換体が得られたという結論は得られていない。また、予備培養および選択培地の組成が異なると、それ自体で抗生物質耐性に差が生じることがわかり、選別法そのものも再検討する必要があることが分かった.以上,頻度は低いものの,上記の条件でクレブソルミディウムの一過性の形質転換が可能であることが示され,安定形質転換体作出への道が開かれた.
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