研究課題/領域番号 |
22570062
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
内山 実 富山大学, 大学院・理工学研究部(理学), 教授 (50095072)
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研究分担者 |
今野 紀文 富山大学, 大学院・理工学研究部(理学), 助教 (50507051)
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キーワード | 脊椎動物 / 浸透圧調節 / 体液尿素濃度 / 環境適応 / 細胞膜輸送体タンパク / 水電解質代謝ホルモン |
研究概要 |
脊椎動物は、窒素代謝老廃物をアンモニア、尿素、尿酸のいずれかの形で排泄する。本研究は、脊椎動物群が環境適応する際に尿素を浸透圧調節物質として利用する機構について、尿素合成、尿素輸送、それらの内分泌的調節機構を明らかにすることを目的としている。23年度の研究では、水陸両生魚と汽水生両生類について尿素合成系と尿素再吸収に関わる細胞膜輸送体分子群の発現解析、ならびに水・電解質代謝ホルモン(アルギニンバソトシンとアンギオテンシン-アルドステロン系)による調節を明らかにすることを目的にした。材料として岩礁棲両生魚ヨダレカケ、汽水生カニクイガエルの体液浸透圧維持について調べた。ヨダレカケについては、昨年度観察した尿素合成酵素と尿素輸送体の発現について、データを補完した。尿素輸送体は鰓ならびに尿細管細胞に発現していることを免疫組織化学的に証明した。カニクイガエル成体については、陸上と汽水(60%海水)に5日間曝露して、血液成分ならびに各ホルモンの変動を測定した。両実験群は脱水と体液濃縮を示し、血漿浸透圧、Na^+、Cl^-、尿素の著しい増加が観察された。また、血漿ホルモン濃度は大きく変動して上昇傾向を示した。この結果は、陸生種と同様に体液浸透圧維持には尿素貯留が重要であることを示した。一方で、陸生種で見られた汽水環境下で外部から水を積極的に取り入れることは観察されなかった。カニクイガエル幼生が汽水環境(80%海水)に耐性を持つことを確認した。個体発生に伴って後肢形成期に尿素合成酵素が体組織で観察され、尿素の微量な排泄も行われた。変態時には尿素による排泄が顕著になった。幼生期にみられる高塩度耐性能は、尿素貯留による体液調節が関わる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両生魚が一日の大半を陸上で過ごす機構について、鰓の微細構造とイオン輸送体発現を明らかにし、さらに肝臓による尿素合成と鰓、腎臓の尿素輸送体が関わる機構から明らかにした。汽水生両生類の水電解質代謝関連ホルモンと体液調節について明らかにした。汽水生両生類幼生が尿素合成能を有しており、この機構が本種の高い耐塩性の最も重要な機構であることを示しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
尿素合成酵素遺伝子と尿素輸送体の解析については、順調に進んでいる。24年度は各種水輸送体との関連についても明らかにしていくことを計画している。魚類と両生類をつなぐ動物群の肺魚類、完全な陸生であり尿酸を産生する爬虫類の尿酸輸送体についても研究を開始した。一方、当初計画した単一細胞レーザーマイクロダイセクション法による研究は、実験技術の面で進んでいない。このため、臓器から組織を摘出してプライマリーカルチャーを行うなどによる方法を計画している。
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