研究概要 |
哺乳類の子宮内膜は,構造と機能が排卵周期に応じてダイナミックに変化する。子宮内膜における細胞増殖の制御機構の解明は未だ不十分である。申請者はマウス子宮内膜細胞の増殖制御機構において,インスリン様成長因子1(Insulin-like growth factor-1,IGF1)とインスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)が重要なはたらきを担うことを明らかにしてきた。本研究においては,子宮内膜においてIGFBP3の発現や機能の制御機構を解析し,子宮内膜間質細胞の増殖制御機構を総合的に解明することを目的とし,以下の事項を明らかにた。 (1)マウス子宮内膜IGF1の発現制御機構をIGF1遺伝子のプロモーターの機能解析により解析した。マウスIGF1遺伝子プロモーターの最小プロモーター領域には,核抽出タンパク質の結合部位があることを示し,子宮内膜ではIGF1遺伝子は発情ホルモン受容体(ER)αにより転写が促進され,ERβにより抑制されることを明らかにした。 (2)子宮内膜組織内におけるIGFBP3の生理的役割を解析し,IGFBP3遺伝子の転写は子宮内膜で発現するTransforming growth factor αにより促進されることを示した。 (3)子宮内膜組織において,IGFBP3の分解酵素と考えられるセリンプロテアーゼKallikrein(Klk1)の発現制御機構と生理的役割を解析した。子宮内膜間質細胞のKlk1発現は,estradiol(E2)により促進され,E2処理後48時間で分泌が高まることが示され,細胞外でKlk1が作用することが示唆された。 以上の結果より,子宮内膜において,E2依存的にIGF1とIGFBP3の発現量が調節され,細胞増殖が制御される。IGFBP3は,E2により発現が高められるKlk1によって分解され,IGF1作用は増強されることが示唆された。
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