研究課題
硫酸化基質の代謝酵素と従来考えられてきたアリールスルファターゼ(Ars)は、棘皮動物のウニでは形態形成運動に関与する細胞外基質であり、哺乳類でも細胞外基質の構成因子であることを既に明らかにした。本研究では、初期発生から器官形成に至る細胞の形態・構造、移動等の変化の解析に適しているメダカを用いて、Arsの細胞外基質としての分子環境とその発現異常による細胞外基質環境の破綻が形態形成に及ぼす影響を解析することにより、細胞外基質Arsがどのような分子機構で形態形成を制御しているのかを解明することを目的とする。本年度は、以下のとおり実施した。1)細胞外基質Arsの分子環境の解明……Arsが構築する細胞外基質環境を解析するために、ArsAとArsbのmRNAの発現を調べた。両者は共にマターナルに存在し、発生過程を通して発現が検出されたが、ArsBは体節期に特に高い発現を示した。in situハイブリダイゼーション法により、mRNAは局在せず、ユビキタスに発現することが示された。メダカゲノム情報をもとに、ArsAとArsBの特異的な領域を抗原として抗体を作成した。Arsと硫酸化基質や既知の細胞外基質との局在の比較解析を、蛍光抗体法と免疫電顕により進めている。2)Arsの形態形成における機能の解明……モルフォリノオリゴによる機能抑制実験を行った。ArsBの機能抑制は、エピボリーの抑制、前後軸の退縮、頭部形成不全、血管・骨格形成異常等を招き、ArsB遺伝子疾患であるムコ多糖症VI型と類似した特徴を示し、ArsBが形態形成において重要な役割を持つことが示された。ArsAの機能抑制は、ArsA遺伝子疾患MLDと同様、外見的には顕著な異常は検出されなかった。MLDで異常が報告されている神経系や免疫染色で発現が検出される組織への影響の解析を進めている。
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Connective Tissue Research
巻: 51 ページ: 388-396
http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/smg/index.html