研究課題/領域番号 |
22570067
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中坪 敬子 (光永 敬子) 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40192760)
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研究分担者 |
安増 茂樹 上智大学, 理工学部, 教授 (00222357)
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キーワード | アリールスルファターゼ / 細胞外基質 / 形態形成 / 分子環境 / 発生 |
研究概要 |
細胞外基質Ars(ArsA、ArsB)による形態形成制御機構を解明するために、初期発生から器官形成までの細胞の運動と形態変化の観察に適しているメダカを用いて、以下の研究を実施した。 1.細胞外基質Arsの分子環境の解明 Arsが構築する組織特異的な細胞外基質環境を解明するために、固定と免疫染色の過程で2価イオンを添加し、2段階に分けて組織を包埋、凍結切片を作製することにより、細胞外基質の遊離を防ぎ、細胞形態を維持した組織を用いることが可能になった。ArsAに関しては、新たに特異性の高い抗体を作り、血管や神経組織における発現を確認し、局在を精査している。ArsBに関しては、細胞外に分泌されたArsBとプロセッシングにより低分子化した細胞内ArsBを、特異抗体により区別して発現解析を行った。胚発生過程では主に細胞内ArsBが発現し、成体になると細胞外ArsBの発現が増え、組織ごとに両者の割合が異なることが示された。細胞外ArsBの割合が高い組織を用いて、細胞外基質ArsBの局在と分子環境を免疫電顕により解析している。 2.Arsの形態形成における機能の解明 Arsの発現異常が形態形成に及ぼす影響を調べ、機能を解析した。ArsBモルフォリノオリゴによる翻訳抑制胚では、エピボリーの阻害、前後軸の退縮、頭部形成不全等が観察されたが、コラーゲン等の細胞外基質の発現への影響は低かった。胚発生期には、細胞内ArsBが主に機能している可能性があり、ArsBが制御するシグナルカスケードを解析している。Arsの継続的な欠損が及ぼす影響を調べる目的で、TILLING法により、Ars変異体をスクリーニングし、ArsA、ArsB共にスルファターゼドメインとその近傍に変異を持つ候補を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細胞外基質Arsの分子環境と形態形成における機能の解明が、2つの柱をなしている。前者に関しては特異的な抗体の作製、固定・免疫染色条件と注目すべき組織が決まり、免疫電顕による解析を行っている。後者に関しては、モルフォリノオリゴを用いた翻訳抑制によるArs欠損の短期的影響だけでなく、TILLING法によりArs欠損の長期的影響の解析が可能になった。今後両者の結果を統合して、検証することにより、研究目的をおおむね達成しうると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの解析で明らかになった細胞外Arsの発現が高い組織におけるArsを核とした分子環境を、免疫電顕等により解析するとともに、Arsと共局在する因子との相互作用を調べる。Arsの機能は、モルフォリノオリゴによる翻訳抑制胚だけでなく、TILLING法によるArs変異体を用いて解析する。Arsのアミノ酸変異の影響は、組換えタンパク質を用いた生化学的解析を行う予定であるが、タンパク質の合成が困難な場合は、変異Ars mRNAの過剰発現により調べる。Ars同士の機能重複に関しても検討する。これらの結果をもとに、細胞外基質Arsによる形態形成制御モデルの構築を行う。
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