研究課題/領域番号 |
22570068
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
田中 一朗 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (60175445)
|
キーワード | 遺伝子発現制御 / 花粉 / 花粉管 / small RNA / ヒストン修飾 / 雄原細胞 / 雄性配偶子 |
研究概要 |
被子植物の雄性配偶体である花粉は、雌ずいの柱頭に受粉すると発芽し、花粉管を伸長する。この花粉管の伸長は、雄性配偶子を雌性配偶体である胚のうまで運搬することによって、重複受精に関与する。昨年度、テッポウユリの雌ずい内を伸長中の花粉管で発現している遺伝子群から、生殖細胞での発現が報告されているイネのMEL1やシロイヌナズナのAGO5と高い相同生を示す遺伝子(LiAGO)を単離した。AGOタンパク質は、small RNAによる遺伝子発現制御において中心的な役割を担っているタンパク質の一つである。このテッポウユリのAGOは、花粉で顕著に発現していたが、体細胞組織での発現はほとんどみられなかった。さらに、in situ hybridization法により、成熟花粉内の雄原細胞で特異的に発現していることも明らかになった。 そこで、このAGOのテッポウユリ雄性配偶子形成過程における機能を明らかにするために、今年度はタンパク質レベルでの発現解析を試みた。 まず、大腸菌で作成したLiAGOに対する特異的抗体を用いて、AGOの出現をウェスタン法によって調査したところ、遺伝子レベルで高い発現がみられた花粉発生後期では、ほとんどAGOを検出することができず、遺伝子レベルでの発現がほとんど認められなかった減数分裂期で有意な出現があった。遺伝子レベルとタンパク質レベルの不一致は、用いた抗体が別のAGOを認識している可能性やこのAGOが花粉管中ではまだ翻訳されず、重複受精前後で翻訳され機能する可能性も考えられるので、さらに別の抗体を作製して検証していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗体を用いたタンパク質レベルの発現解析で予想外の結果が得られたので、その後の展開に少し苦慮している。
|
今後の研究の推進方策 |
花粉や花粉管特異的遺伝子とは別に、現在テッポウユリの減数分裂特異的遺伝子の単離も試みているので、減数分裂期に特異的なイネのMEL1に相当する別のAGOの存在も当たってみる予定である。
|