1. カクレクマノミアロマターゼ遺伝子の配列決定 カクレクマノミの肝臓および脳由来のcDNAを鋳型とし、RACE法を用いてCyp19a(ovarian-type)、Cyp19b(brain-type)の2種類の遺伝子全長の配列決定を行った。 2. コルチゾール投与実験 未成熟なカクレクマノミにコルチゾール0.7mg/gを混ぜた餌を与えて10日間飼育を行い、行動解析、血中コルチゾール濃度の測定、生殖腺と脳におけるCyp19a、Cyp19bの発現量を評価した。ビークル対照群と比較して、血中コルチゾール値はコルチゾール投与群で有意に上昇した。Cyp19Aは生殖腺、脳のいずれにおいても発現量の上昇は認められなかったが、Cyp19Bは生殖腺と脳の両方において発現量の有意な上昇が認められた。 3. 性決定の時系列的変化の検証 未成熟なカクレクマノミを3匹1組で3ヶ月間飼育を行い、社会行動、血液中ステロイドホルモン、生殖腺と脳のCyp19の発現量の測定を行った。群のなかの社会順位は、飼育開始直後に決定した。血中ステロイドホルモン濃度には社会順位による差は認められなかったが、優位個体の生殖腺におけるCyp19aに有意な発現量の上昇が認められた。 4. その他 東日本大震災によって研究室が被災し、維持していたカクレクマノミの系統をすべて失ってしまったので、来度は新しい系統を確保した上で、以上に記載した実験をすべてやり直さなくてはならなくなった。
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