研究課題
本研究の目的は、社会的他者との競争的状況が、選択衝動性を亢進する脳内機構を、細胞レベルで明らかにすることにある。H22年度までの行動実験によって、(1)競争採餌が「近い」餌に対する主観的価値を高め、よって「近くて小さな餌」(SS)と「遠くて大きな餌」(LL)の二者択一選択において、SSを選ぶとる頻度を著しく高める事(衝動性を亢進する事)を、報告した。他方、内側線条体および側坐核(MSt-NAc)の局所破壊は単独(非競争)条件下の選択において同様の衝動性亢進を引き起こす。よって、MSt-NAcの機能を介して、社会的状況が衝動性を制御している可能性が示唆された。本年度は、(1)競争状況が労働投資量に及ぼす効果を吟味すると共に、(2)MSt-NAc神経核のニューロン活動に及ぼす影響を単一ニューロンレベルで解析した。その結果、(1)競争は実際の収益の侵害(利益相反)を経験することが無くとも、労働投資量を増大させること、(2)MSt-NAcニューロンの一部に、競争状況において特異的な修飾を受けるものがあること、を見出した。特に、(1-1)労働投資は移動(歩行局面)にとどまらず、啄ばみ(消費局面)にも等しく及ぶこと、(1-2)競争下の2個体は同調した移動を行うこと、を見出した。これは行動生態学における社会的採餌理論により、最も良く説明できる。他方、ニューロン活動の解析では、(2-1)餌の視覚的手掛かりの提示に対するバースト活動は比較的影響を受けていないのに対して、(2-2)実際の餌の出現直前にピーク活動をもつ遅延期バースト活動が競争状況かで抑制されること、を見出した。今後は、遅延期活動抑制のシナプス機序を明らかにすると共に、この抑制的修飾が衝動性をもたらすか否か、脳内電気刺激による検討を試みる。
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http://www.sci.hokudai.ac.jp/bio/teacher/t-0190.php
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