研究課題
競争的採餌が動物の選択衝動性を亢進する神経機構を、大脳基底核の単一ニューロンレベルで解析する事を目的とする。平成22年度までの研究において、ニワトリの雛(艀化後1-4週齢)の異時点間選択における意思決定を、主に行動学的手法によって解析してきた。これは、「小さくとも直ぐに得られる餌」と「大きいが待たねばならない餌」との間の選択を調べる事によって、報酬の「近さ」を「大きさ」に対してどれほど高く評価するか、を計る物であり、「選択衝動性」の指標となる。22年度までに行動研究はほぼ完了し、(1)競争採餌を一過的に経験すると、現実の収益が損なわれない条件であっても、その後の選択衝動性が亢進して「小さくとも直ぐに得ら得る餌」を選ぶ頻度が高まること、(2)競争採餌中の選択に着目しても、その場の衝動性は全く亢進をしておらず、ただオペラント反応(選択のために起こす行動)の反応潜時のみ著しく短縮すること、が見出された。23年度は腹側線条体(側坐核および内側線条体)に着目し、そのニューロン活動を調べた。この領域の局所破壊は選択衝動性を亢進することが、先行研究によって明らかになっている。その結果、以下の知見を得た。(3)遅延期(選択を行った後、報酬が供給されるまでの期間)および報酬期(予期報酬が提示された後の期間)の神経活動に着目すると、競争条件に置いて発火頻度が抑制(あるいは一部に興奮)を受けるニューロンを見出した。(4)これらの活動変化を示したニューロンの約半数において、非競争(事前対照)ブロック〉競争採餌ブロック〉非競争(事後対照)ブロックの3ブロック間比較にて、事前と事後の発火率に有意な差を示すものが見出された。競争による可塑的な変化は、競争による衝動性亢進との並行現象である可能性がある。その検証を24年度の課題としたい。
2: おおむね順調に進展している
競争採餌文脈における活動修飾を明らかにすることは、最終的な目的ではない。目的はあくまで、競争という状況が時間割引に影響する過程を、その機構と共に明らかにすることである。これまでの研究によって、文脈的な神経修飾は行動・神経活動双方に置いて明らかとなったが、時間割引の神経機構を明らかにしたものではなく、更なる研究が必要である。
既に上述したように、文脈的修飾を受けるニューロン活動の約半数に置いて、修飾の結果は事後対照ブロックに置いても残存し、この変化が(1)競争採餌と因果的に結びつくか、(2)時間割引の亢進と因果的に結びつくか、を更に定量的に検討する必要がある。これまでの研究を持続するだけで良く、新規な実験計画を立ち上げる必要はない。
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