多くの動物の脳機能は左右で同じではなく、機能的分業や偏側性が認められる。軟体動物腹側類であるナメクジは、嗅覚忌避連合学習を獲得可能であり、この学習には脳の左右に一対存在する前脳葉と呼ばれる高次嗅覚中枢が必要である。そして、記憶形成時には左右いずれか片側の前脳葉しか使われていないことが先行研究により示唆されていた。そこで本研究では、片側前脳葉の破壊実験を行うことで、行動学的に(1)記憶形成時には片側の前脳葉のみが左右いずれか一方のみがランダムに使用されていること、(2)記憶が片側の前脳葉に貯蔵されていること、(3)記憶が左右の前脳葉間で転送されることはないこと、の3点を明らかにした。
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