研究課題/領域番号 |
22570079
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
藍 浩之 福岡大学, 理学部, 助教 (20330897)
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研究分担者 |
池野 英利 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (80176114)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 行動学 / 神経科学 / 昆虫 / 生理学 |
研究概要 |
1、ミツバチの匂い学習と学習した匂い刺激により誘発される行動の季節変動 弁別条件付けにより特定の2つの匂いを学習したミツバチにおいて、その匂い刺激で誘発される歩行様式を調べた結果、報酬と連合学習した匂い刺激(CS+)により体軸を左右交互に変換しながら歩行するジグザグ歩行の出現率が高く、報酬と非連合学習した匂い刺激によりジグザグ歩行の出現率が低いこと分かってきた。今年度は、ミツバチの屋外活動時期である春、夏、秋におけるこの歩行様式の比較を行った。その結果、春には吻伸展反応を用いた弁別学習の成功率が低く、秋に向けてのミツバチの弁別学習率は徐々に高くなることが分かった。また弁別学習が成立した個体において、そのCS+刺激により誘発される歩行パターンを、自作の行動追跡システムで記録・解析した結果、ジグザグ歩行の出現率が春には低いが、秋には高くなることが分かった。 2、ミツバチの尻振りダンスで符号化された蜜源ベクトル情報の一次中枢の形態学的、生理学的解析 蜜源への距離情報を検出するためのジョンストン器官と方向情報を検出するための頸部器官から、それぞれ蛍光色素を注入し、その感覚統合領域を調べた結果、食道下神経節背側領域でこれら2つの感覚ニューロンの終末領域があること、さらに体軸方向の空間地図が存在することが分かってきた(Ai and Hagio, in press)。一方,食道下神経節背側領域に細胞内記録法および染色法を適用し,振動感受性ニューロンを同定した。その結果,4つのカテゴリーに分類される、33種類の振動感受性介在ニューロンが得られ、これらのニューロンを応答特性および細胞形態によって分類した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのミツバチの匂い学習および学習した匂いによって誘発される匂い源探索行動の研究は、ある特定の時期に行われてきた。我々の研究で、これらが季節によって変動することが明らかとなった。季節によるこれらの変動が何に起因しているかを特定することはできなかったが、今後の行動解析をする上で重要な情報を得ることができたと考えている。一方、ミツバチの尻振りダンスで符号化された蜜源ベクトル情報異種感覚統合中枢を形態学的に同定することができ、欧文雑誌に掲載された。さらにこの中枢における振動情報処理機構を調べるため、振動応答性介在ニューロンの形態学的、生理学的同定を進めており、上記ベクトル情報に関わる異種感覚統合機構との関連も調べている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は匂いによって誘発される歩行様式と匂い学習の関連性を調べ、学習によって引き起こされる特有の歩行様式があることの確証を得ることができた。匂い以外の刺激(尻振りダンスで生じる音刺激や振動刺激など)が匂い源探索行動に及ぼす影響について、実験を進めているが、まだ十分な結果を得るまでに至っていない。今後は様々な実験系(観察巣箱や歩行アリーナ、半拘束条件下での歩行解析装置)で調べる計画である。一方、尻振りダンスで生じる振動信号の処理に関わる神経回路の全貌を明らかにするため、今後も網羅的に振動応答性介在ニューロンの生理、形態データの取得を推進する。ジョンストン器官由来感覚ニューロンの一次中枢に分枝をもつ介在ニューロンに、ガラス微小電極による細胞内記録を行うと同時に、触角への振動刺激、嗅覚刺激、およびそれらの組み合わせによる応答性を解析することにより、異種感覚統合機構を調べる。平成24年度はこれらの振動応答性ニューロンの神経伝達物質を調べるため、セロトニン免疫組織化学的な実験を試みたが、有効な結果は得られなかった。本年度はさらに抑制性介在ニューロンとの関係を調べるため、免疫組織学的な実験を進める。
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