研究課題
1、古典的条件付けされた匂い刺激によって生じるミツバチ歩行パターンに対する尻振りダンス音の影響;ミツバチは報酬と連合学習した匂い刺激により、体軸を左右交互に変換しながら歩行するジグザグ歩行を生じる。このジグザグ歩行の出現率は、季節によって変動することも分かっている。本年度の研究で、ジグザグ歩行の出現率に対する尻振りダンス音の影響を調べた結果、ジグザグ歩行時の前進距離が有意に高くなることが分かってきた。しかしこの効果は個体差が高く、匂い学習の他、季節、日齢、採餌経験にも影響を受けて変化する可能性がある。これらの影響を現在調査中である。2、振動応答性介在ニューロンの候補神経伝達物質の免疫抗体染色;ミツバチの脳を用いγ―アミノ酪酸(GABA)の免疫抗体染色を行い、脳内のGABAの2次元分布地図を作成した。これまでに同定した振動応答性介在ニューロンの細胞体クラスタが存在する領域において、GABA陽性の細胞体の存在が明らかとなった。現在、このデータを元にGABAの3次元分布地図を作成している。3、計算機神経科学的な解析システムの構築;これまでに収集した振動応答性ニューロンの形態、生理学的実験結果を元に、計算機神経科学的な解析をするためのプログラムおよびそのシステムを構築し、英文論文にした。すでにこのシステムを用い、これまでに申請者らが同定した振動応答性介在ニューロンのデータベースの構築に着手している。
2: おおむね順調に進展している
尻振りダンスによって生じる振動が、匂い源探索行動に与える影響を調べた。その結果、振動刺激がミツバチの匂い源探索歩行を活性化する傾向があることが分かった。しかし、その傾向は個体差が高く、ミツバチの日齢や経験(採餌や他個体との様々な通信行動)によって影響を受ける可能性がある。つまり本研究提案時点では想定していなかった日齢や経験と匂い源探索行動に対する振動刺激の効果の関係を明らかにする必要性が生じている。一方、ミツバチの振動応答性介在ニューロンの神経伝達物質の探索のため、γ―アミノ酪酸(GABA)の免疫抗体染色を行い、脳内のGABAの2次元分布地図を作成した。この結果は、GABA作動性振動応答性介在ニューロンの同定の基礎となる有用な情報となる。またこれまでに収集した振動応答性ニューロンの形態、生理学的実験結果を元に、計算機神経科学的な解析をするためのプログラムおよびそのシステムを構築した。このシステムを用いて、本研究で得られた情報を統合するとともに、計算機シミュレーションによる論理的な解析をするための環境が整った。
これまでの研究から、匂い源探索行動は匂い学習のみならず、ミツバチの日齢や経験によって影響を受けることが分かった。また尻振りダンスで生じる振動刺激によって匂い源探索報道が促進する効果も、日齢、経験などによって影響を受ける可能性がある。ゆえに本研究提案時点では想定していなかった日齢や経験と匂い源探索行動に対する振動刺激の効果の関係を調べる必要性が生じている。今年度はまず、日齢と尻振りダンス行動との関連を調べるため、羽化したミツバチに個別マーキングを施し、観察巣箱内での日齢と尻振りダンス関連の通信行動との関係、および尻振りダンスで生じる振動刺激の効果を調べる。さらに経験(採餌や他個体との様々な通信行動)と尻振りダンス関連の通信行動との関連を調べるため、巣内である一定期間、外部環境から隔離したミツバチを用い、隔離後自由にしたミツバチの尻振りダンス関連行動、および尻振りダンスで生じる振動刺激の効果を調べる。一方、振動応答性介在ニューロンの神経伝達物質の探索のため、ジョンストン器官由来感覚ニューロンの一次中枢に分枝をもつ介在ニューロンにガラス微小電極による細胞内染色を行った後、γ―アミノ酪酸(GABA)の免疫抗体染色を行う。この実験によりGABA作動性振動応答性ニューロンを明らかにし、尻振りダンスで生じる振動情報処理に関わる、興奮性および抑制性の神経回路モデルを作成できる。また、本年度開発した計算機神経科学的な解析をするためのプログラムおよびそのシステムを用いて、尻振りダンスで生じる振動情報処理神経回路のシミュレーションを行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件)
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