研究概要 |
プロスタグランジンなどの脂質(脂肪酸)は睡眠調節に関与することが知られている。一方で睡眠は疲労回復や記憶の定着などに重要とされるが、これら睡眠の生理的意義の分子機構は解明されていない。申請者らは睡眠中のマウスの大脳皮質において脂肪酸輸送タンパク質であるFABP7(fatty acid indingprotein 7, brain)の発現が亢進することを発見した。本申請研究は、睡眠時の脳内における、脂肪酸、FABP7、およびその相互作用タンパク質の役割を明らかにし、睡眠制御との関連について解明することを目的とする。平成22年度は、FABP7と相互作用する候補タンパク質を単離するため、FABP7をベイトとしてin vitro virus (IVV)法により45個の候補タンパク質を単離した。これらのタンパク質について、睡眠時(明期)と覚醒時(暗期)での発現レベルを比較するために、明期開始2時間後の睡眠時と暗期開始2時間後の覚醒時のマウス大脳皮質から調整したcDNAを用いて定量的PCRを行った。その結果、候補タンパク質は全て覚醒時の方が睡眠時よりmRNA発現レベルが高いことが判明した。これらの候補タンパク質のうち、in vitroでのpull down実験によってFABP7との結合が確認できた5個のタンパク質について、明期開始から0、1、2、4、6、8、10、12、14、17、21時間後の11ポイントでRNAレベルを経時的に測定した。その結果、FABP7および候補タンパク質は全て明期開始17時間後、すなわち覚醒の7時間前からRNAレベルが上昇し、明期開始後、元のレベルに戻ることが明らかになった。このことは、覚醒期の後半から睡眠期に移行する時点でFABP7とその相互作用タンパク質が機能している可能性を示唆している。
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