研究課題/領域番号 |
22570081
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研究機関 | 財団法人 大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
永田 奈々恵 財団法人 大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (80390805)
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キーワード | 睡眠 / FABP7 / 脂肪酸 |
研究概要 |
プロスタグランジンなどの脂質(脂肪酸)は睡眠調節に関与することが知られている。一方、睡眠は疲労回復や記憶の定着などに重要とされるが、これら睡眠の生理的意義の分子機構は解明されていない。 睡眠中のマウスの大脳皮質において脂肪酸輸送タンパク質であるFABP7の発現が亢進することを見出し、その相互作用タンパク質の同定を進めてきた結果、前年度までに5種類のFABP7相互作用候補タンパク質を同定した。平成24年度は、相互作用の確認を進め、(1)COS7細胞にFABP7と5種類の相互作用候補タンパク質を共発現させ、免疫二重染色法を行った。その結果、5種類全ての相互作用候補タンパク質とFABP7との局在の一致を確認した。(2)強制発現COS7細胞を用いた免疫沈降法により、候補タンパク質のうちGPM6aのみ、FABP7との相互作用が確認できた。(3)マウス全脳のホモジネートを用いた免疫沈降法においても、GPM6aとFABP7との相互作用が確認できた。そこで、(4)Neuro2a細胞にFABP7を過剰発現させたが、GPM6aのmRNA発現量に変動はみられなかった。(5)睡眠時の脳内におけるFABP7の役割解明を目的に、個体レベルで脳内FABP7遺伝子の発現を抑制するために、short hairpin Fabp7を搭載したアデノ随伴ウイルスベクターを作製した。GPM6aは、神経細胞の成長円錐に最も多量に存在する膜タンパク質で、神経細胞の分化誘導に関わるといわれている。一方、FABP7は神経幹細胞の増殖に関与することが報告されている。これは、FABP7とGPM6aが睡眠中の神経細胞において相互作用し、機能している可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養神経細胞や培養アストロサイト細胞にFABP7やその相互作用タンパク質を発現させる際、リポフェクション法による遺伝子導入法を用いているが、導入効率が低いためにFABP7相互作用の確認に時間がかかり、分化・増殖能の検討がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.FABP7の脂肪酸結合能におけるGPM6aの機能解析 表面プラズモン法により結合実験を行い、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸などの脂肪酸添加の有無による、FABP7とGPM6aの結合定数の変化を調べる。予備検討の結果、GPM6aは大腸菌での発現精製が困難であったため、まず、FABP7結合ドメインを同定し、結合ドメインのリコンビナントタンパク質を用いて結合実験を行う。 2.FABP7遺伝子ノックダウンマウスを用いた、マウス個体での機能解析 shFabp7-hrGFP融合タンパク質発現ベクターを用い、投与されたマウスの脳波、睡眠量、行動量などを測定し、FABP7のノックダウンによる、睡眠の質と量の変化を調べる。
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