研究実績の概要 |
平成24年度に引き続き、タイプ標本を含めた系統解析や培養実験による形態比較などの解析を通して、緑藻アオサ・アオノリ類に関する種分類に関する解析を進めた。日本全域からの種多様性解析では,約半数が未記載種であることが示唆され,そのうちの1種をナツアオノリUlva tepidaとして報告した(Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series B 40: 1-13)。外部形態的にボタンアオサに類似する藻体の網羅的分子系統解析,培養実験およびタイプ標本の形態観察により5種が確認でき,そのうちの1種を新種カサネアオサUlva adhaerensとして報告した(European Journal of Phycology 50: 100-111)。また、河川産スジアオノリと海産ウスバアオノリのマイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝構造解析については、天然アオノリ最大産地である高知県四万十川産を含めた。各地で有性生殖から無性生殖が分化していることが強く示唆された。以前に得られた北海道忍路のウスバアオノリ♂から北海道信砂川のスジアオノリ♀への流動についても含め,論文執筆を進めている。スジアオノリやウスバアオノリに加え,別目のヒトエグサも食用緑藻として有効利用されている。アオノリ・ヒトエグサを含めた税関におけるDNA分析による製品原料種推定での簡易スクリーニング法の開発をおこなった(Fisheries Science 80: 859-867)。
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