本研究は、家畜化当初の古い特徴を遺伝的に保持している可能性がある日本在来家畜種、特にイヌ・ネコ・ウマに焦点をあて、遺伝的多様性の分析を通じて家畜化の過程を解明することを目的とする。本年度は、以下のような項目に重点的に取り組んだ。 ①遺伝的サンプルの収集を進めた。特にネコについて、過去2年間の試料収集を上回る本格的なサンプル収集をおこなった。これまでは、家庭内で飼育されているものにとどまっていたが、野外で自由に行動するいわゆる「ノラネコ」について、100以上のサンプルを得た。 ②DNA多型の解析を進めた。イヌ、ウマ、ネコについて、日本在来品種とそれ以外の品種の比較を念頭に、DNAの多型解析を進めた。具体的には、ミトコンドリアDNA、マイクロサテライトDNA、および毛色、ストレス耐性、筋肉特性(瞬発力/スタミナ)、尾型に関する遺伝子を分析し、新たな知見を得た。これらの実験結果については、現在とりまとめを進めている。 ③DNA資料の統計学的解析・集団遺伝学的シミュレーションをおこなった。イヌに関して、既に出版されている遺伝的データと合わせて遺伝的解析をおこない、オオカミを含めた全世界的な系統関係、分岐年代、日本への渡来時期などについて論文にまとめて投稿した。ウマに関して、ミトコンドリアDNAのデータを再検討をおこない、分岐年代や過去の個体数変動に関する論文にまとめ、現在、投稿準備中である。この他、自然選択・人為選択の強さを適切に評価し、種間比較をおこなう方法に関する理論研究を進め、その成果を学術雑誌に発表した。
|