研究課題/領域番号 |
22570088
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西田 佐知子 名古屋大学, 博物館, 准教授 (10311490)
|
研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2014-03-31
|
キーワード | 繁殖干渉 / フウロソウ属 / 生物地理 / 分布 / ミツバフウロ / ゲンノショウコ |
研究概要 |
本研究は、植物について気温や地質条件では説明できない不可解な分布様式を、繁殖における近縁種間の干渉によって統一的に説明することを目的とする。とくに、ゲンノショウコやミツバフウロ、ヒメフウロなど、フウロソウ属の近縁種間における繁殖をめぐる相互作用と分布の関係の解明を試みる。 本年度は生態学的研究や分子系統解析などを中心に以下のような調査を行い一定の成果が得られた。 まず生態学的研究については、前年度やその前の年度にひきつづいて、滋賀県や岐阜県などを中心に、ミツバフウロとゲンノショウコが同所的に分布する場所についてさらに細かな分布(マイクロハビタット)の調査を行った。その結果、それぞれの種が細かくみると棲み分けている地点が存在していることを確認した。また、両者の頻度と結実率の相関を測定したところ、両者は互いに弱い繁殖干渉を受けていると思われる結果が得られた。 分子系統解析についてはミツバフウロとゲンノショウコおよびその雑種についてアロザイム分析を行い、形態的に雑種と考えられたいた個体が確かにミツバフウロとゲンノショウコの雑種であることを確認した。また、この雑種の個体についてメスとしての機能とオスとしての機能を観察したところ、結実率が極端に低い点でメスとしての機能も落ちていると推察できること、また、花粉が小さく殆ど発芽しないという点でオスとしての機能も落ちていることを確認できた。 以上の結果より、ミツバフウロとゲンノショウコは、全国的には分布が重なっており、地域的にも同所的に分布すると考えられていたが、実際の細かな分布としては棲み分けを行なっており、結実率の低下と不稔雑種の産出という弱い繁殖干渉が起こることによって分布が説明できる可能性が示された。そこで、これらのことを複数の学会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、とくに重点的に行う予定だったヒメフウロ、ミツバフウロ、ゲンノショウコに関する研究についておおまかにだが一定の結果を得ることができた。ミツバフウロとゲンノショウコについては、具体的な分布地図の作成方法や、各種の環境条件に関する測定を行える目処もたった。アロザイム分析についても他の研究者の協力を仰ぎながらであるが確認ができ、これによって研究のストーリーが大体出来上がった。これについては追加調査を行うことによって、1年以内に論文も作成できる目処がたったといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒメフウロ、ミツバフウロ、ゲンノショウコについては研究修了の目処がついたた。ただ、ミツバフウロとゲンノショウコの棲み分けについては、環境条件の細かな測定など、より実質的な調査が残っている。また、人工授粉による結実率調査も行いたい。また、今後は研究の総括として、フウロソウ属全体の分布について考察を行いたい。そのためには、上記の種以外のフウロソウ属植物について分類・分子系統・分布について広く研究を続けていく予定である。現在のところ、属全体の分子系統やハプロタイプを用いた系統地理解析を行うためにはより多くのサンプルが必要であり、これらについて研究を進めて行きたい。
|