研究概要 |
平成22年度の研究では、ヒマラヤ山地のマカクの遺伝子分析と系統解析を重点的に進め、さらに保存血液を使いスリランカのトクモンキーについても遺伝子分析を行うことができた。 ヒマラヤ山地では、ブータンとネパールで成果を得た。ブータンの研究では、現地共同研究者の協力により霊長類の分布情報を充実させ、これまでに収集している糞試料を利用してミトコンドリアDNAを標識とする系統地理解析を進めた。また、ブータン東部(アルナーチャルプラデーシュとの国境付近を含む地域)から新しい試料を入手し、これを分析した。一連の分析から、アルナーチャルプラデーシュで新種として記載されたmunzalaとブータンのアッサムモンキーの関係について興味深い知見を得ている。さらに、7月と3月にはブータン西部でアッサムモンキーを現地調査し、2群に発信器を装着することに成功した。現在、現地の共同研究者の協力で、生態と行動の観察が進んでいる。 ネパールの研究では、糞試料を利用して、カトマンズのアカゲザル群でSTR多型を調査するとともに、西部と中部のアカゲザルとアッサムモンキーのミトコンドリアDNA変異に関する結果を出すことができた。また、次年度以降の調査に向け、ヒマラヤ山岳地帯に生息するアカゲザルとアッサムモンキーの分布と生態について、現地の共同研究者から関連情報の提供を受け、調査計画を立てている。 一方、スリランカのトクモンキーの研究では、1980年代に採取され保存されていた血液試料を利用して、DNA分析を進めた。ミトコンドリアDNAの非コード領域を中心とする塩基配列データから、近年区別されるようになった3亜種(sinica, aurifronsおよびopisthomelas)の分化を比較することができた。また、スリランカの共同研究者から生態と分布に関する情報を受け、遺伝分化との関係について、現在比較を行っている。
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