研究概要 |
本研究を構成する3つのステップ(1.爬虫両生類分布リストの作成、2.島嶼分布のパターン解析、3,ヤモリ属とトカゲ属の集団遺伝解析)のそれぞれを進めた。このうち1番については、渡嘉敷村の中島とハテ島、座間味村の屋嘉比島と久場島で野外調査を行い、7つの分布初記録を得たほか、5つの不確かな既存の分布記録を追認した。このうち、渡嘉敷村のものについては標本の形態的な特徴などを調べ、既に公表した。徳之島でも調査を行い、遺伝解析に必要な標本の採集を行った。 天候と日程などの関係から調査できなかった島も残っており、1番のステップは完結できていないが、2番の島嶼分布のパターン解析についても予備的な解析を行った。島嶼をその面積と供給源からの距離に応じて2次元プロットし、各両生爬虫類種の分布の有無を異なるシンボルで塗り分けた。判別分析により、その種がいる島といない島とを区別する判別関数を算出し、面積と距離の2変数の関数への寄与を評価したところ、両生類ではリュウキュウカジカガエルを除き、ほとんどの種で距離の効果は確認できなかった。爬虫類ではオキナワキノボリトカゲ、ヘリグロヒメトカゲ、ハブなどで供給源からの距離も分布の有無に距離が統計的に有意に寄与しているという結果が得られた。今後、遠くて小さい島を追加すれば、さらに意味のある結果が得られる展望が立った。 3番の遺伝解析については予備実験を進め、ヤモリの類のマイクロサテライト・マーカーとして10前後の遺伝子座が使えそうなことが確かめられた。また、トカゲ類については、マグネティック・ビーズを使った方法により31のマイクロサテライト・モチーフを含む断片の配列を得て、そのうち18についてプライマーを設計し、適正なPCR条件の検討に入る準備が整った。
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