研究課題/領域番号 |
22570099
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
長谷川 政美 統計数理研究所, 名誉教授 (60011657)
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研究分担者 |
足立 淳 統計数理研究所, データ科学系, 准教授 (30370092)
曹 纓 統計数理研究所, データ科学系, 助教 (20370091)
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キーワード | ミトコンドリア / 適応的進化 / 中立的進化 / 家畜化 / UCA仮説 / アラインメント / 分子系統学 / 機能的制約 |
研究概要 |
分子進化学・分子系統学のさまざまの具体的な問題解明を通じて、ゲノム規模の大量データ解析に必要な計算機環境を整備した。平成23年度の主な研究実績は以下の通りである。 1.ミトコンドリアのゲノム解析を通じて、中立的進化と適応的進化の寄与の度合いがさまざまな状況でどのように変わってきたかを調べた。(1)脊椎動物の進化において、陸上に進出したことに伴う、適応的な分子進化。(2)家畜化に伴う機能的制約、(中立進化の負の選択圧)の緩和。ヤクやマウスの家畜化に伴う変化など。 2.地球上のあらゆる生物が一つの共通祖先から進化したというUCA(Universal Common Ancestor)仮説は、多くの状況証拠から支持されるが、これまで直接的な証拠はなかった。Theobaldは2010年に配列データの統計的な検定により、UCA仮説を証明したという論文をNature誌に発表して大きな反響を呼んだ。その直後われわれは、彼の用いた方法には多くの欠陥があり、UCA仮説は直接的には証明されていないという主張をNature誌に発表した(Yonezawa&Hasegawa,2010)。今年度はこの問題をさらに検討し、Theobaldが用いたアラインメント法はこの問題に適応するには致命的な欠陥をもっていることを示した。彼はあらかじめアラインメントされた配列データを用いてUCA仮説とそれと対立する独立進化仮説との間のモデル比較を行ったのであるが、この方法ではUCA仮説を支持するような潜在的な偏りが含まれている。Theobaldの方法を克服するためには、アラインメントと系統樹推定を独立の手続きとするのではなく、2つを統合した新しい方法が必要であることを示した。 3.哺乳類や鳥類の進化についてのこれまでの分子系統学の成果を一般の人たちに伝えるための本を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予想しなかったいくつかの新しい展開があった。
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今後の研究の推進方策 |
具体的なデータ解析を通じて、新しい解析方法の開発を計るという当初の計画を推し進める。
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