研究課題/領域番号 |
22570101
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝倉 彰 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (40250138)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生物地理 / 異尾類 / 甲殻類 / mtDNA / COI遺伝子 / 生活史 |
研究概要 |
暖温帯域と熱帯域に共通して分布する潮間帯性の甲殻異尾類(ヤドカリ類)の生態的特性および行動的特性を調べるために、暖温帯域においては和歌山県西牟婁郡白浜町の岩礁において、熱帯域においては沖縄県の沖縄本島の具志川河口付近のサンゴ礁にて調査を行った。採集した個体はサイズを測定し、性別、抱卵の有無を調べ、その生活史特性を調べた。その結果、沖縄では和歌山県に比べてオス、メスともサイズが小さく、卵を持ち始めるサイズ(初繁殖サイズ)も小さかった。また和歌山では周年を通じて大型個体が見られ、密度に大きな変化は無かった。一方沖縄では、夏期に向かって急激に個体数を減じ、7月にはほとんど採集することはできなかった。しかし秋になると小型個体が見られるようになり、それが徐々に大きくなっていった。すなわち、1年にひとつのコホートが認められるのみであった。これらとサイズヒストグラムの変化から、和歌山では2年以上の寿命があるが、沖縄では1年の寿命しかないことが示された。また色彩に違いがみられ、沖縄産のものはどの季節のものも緑色の個体が主であり、和歌山は紺色の個体が主であり、色分解による3原色の頻度に差が見られた。 また遺伝的差異を調べるためミトコンドリアDNAのCOI遺伝子を調べた。日本列島の房総半島、紀伊半島、四国、九州の岩礁産の個体、沖縄のサンゴ礁の個体のDNAを比較した。しかし、その比較においては有意な差を見いだすことはできなかった。 なお、最新の情報交換のため熊本大学で開催された日本甲殻類学会に参加し、またSan Franciscoで開催された国際甲殻類学会例会に参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では暖温帯から熱帯域に生息する甲殻異尾類の資料標本を、日本列島各地、インド洋から太平洋までの各地域から採集するとともに、特に岩礁産とサンゴ礁産の集団の生態的比較を行うことを目的としている。日本列島においては、房総半島、伊豆半島、紀伊半島、四国、九州、沖縄の個体を採集することができ、DNAの解析にかけている。また海外では、台湾、ホンコン、インドネシアの個体を採集することができた。それゆえ採集調査は順調に進んでいる。また沖縄と和歌山の集団の生態的な差異を調べる調査は、本年度の5月でほぼ終了し、これもまた順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、この研究の最終年度にあたる。到達目標としては海外のサンプル(台湾、ホンコン、インドネシアおよびインド洋のレウニオン島)のDNAを調べることと論文の執筆、また国際甲殻類学会(コスタリカ)での発表を予定している。そして総括を行う予定である。
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