研究課題/領域番号 |
22570103
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
並河 洋 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (40249909)
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研究分担者 |
立花 和則 東京工業大学, 大学院・バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (60212031)
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キーワード | ヒドロ虫 / 系統進化 / 生殖細胞 / 生殖幹細胞 / 減数分裂 |
研究概要 |
本研究は、多細胞動物の系統上根幹にあるヒドロ虫類(刺胞動物)について、生殖体の型や形成位置の異なる数種を材料に、生殖細胞分化様式における多様性を明らかにし、『多細胞動物の発生初期におこる生殖細胞系列分化が系統上いつ生じたのか』の問題の解決に寄与することを目的とする。 平成23年度は、タマウミヒドラの卵細胞形成過程を組織学的に追跡した。本種は、ポリプがすべて同形の群体性ヒドロ虫類であり、従来、生殖細胞は触手基部に形成される子嚢タイプの生殖体の内部で分化するとされていた。しかし、本研究において、卵母細胞はすでに生殖体外に存在し、それらが接した部分に生殖体が形成され、周囲の内胚葉とともにその中に入り、成長していくことが明らかとなった。この現象はこれまでに明らかにしたアミネウミヒドラなどの子嚢タイプの生殖体の形成過程と類似するものであり、子嚢タイプの生殖体形成には分類群を越えて共通する機構があることが示唆された。 タマクラゲの生殖細胞分化に関しては、平成22年度に分子マーカーとしてクローニングした減数分裂初期に発現する遺伝子Spo11とDmc1を利用してホールマウントインシチュハイブリダイゼーションを試みたが、タマクラゲの自家色素の阻害により、これら遺伝子の発現を観察することは困難であった。そこで、自家色素を持たないエダアシクラゲにおいて抗体染色によりSpo11の発現を調べたところ、生殖細胞の検出に有効であることが明らかとなった。このことから、Spollは同様に自家色素をもたないミサキアミネウミヒドラやハタイヒドラ、タマウミヒドラなどに対しても減数分裂初期の生殖細胞を観察できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が所属する国立科学博物館の研究部門移転による標本資料の移送作業並びに担当する企画展の実施などに伴い、本研究に充当できる時間が減少したために、生殖細胞分化の過程における遺伝子発現の検出などの実験に十分な時間を与えることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
タマクラゲについては自家蛍光色による抗体検出の阻害が著しいため、他のヒドロ虫類において生殖細胞分化過程追跡の研究を優先的に進める。具体的には、生殖体の型や形成位置が異なり、且つ、自家蛍光色のないヒドロ虫類数種において、Spo11やDmc1の発現が検出される細胞の場所を特定することで生殖細胞がどこで分化するか(減数分裂を開始するか)を明らかにし、生殖体の型や形成位置と生殖細胞分化の場所との関係を解析する。
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