研究概要 |
材料とするツルクモヒトデ類の標本を,日本周辺海域(小笠原,日本海,東シナ海,本州太平洋岸)における国立科学博物館のプロジェクト研究における調査航海などによって,新たに採集した.これらの新しい標本とともに,パリ自然史博物館,アムステルダム大学動物学博物館,コペンハーゲン大学動物学博物館スウェーデン自然史博物館を訪問し,各館が所蔵しているタイプ標本ならびに未調査の標本を材料として用い,従来の分類学的形質の観察,走査型電子顕微鏡による骨片の観察,ならびに分子系統のためのDNAの採取を行った.これらの過程で判明した,タコクモヒトデ科,キヌガサモヅル科の未記載種,シノニム,新記録種等については,詳細な記載を行って分類学的論文としてとりまとめて発表した 分子系統については,これまでに得られた種の一部において,核DNAの18S rRNA,28S rRNA,ミトコンドリアDNAの16S rRNAの部分配列を用いてデータ解析を実施したところ,ツルクモヒトデ類の系統分類の部分的な見直しが必要であることが明らかになったとともに,腕の分岐の進化は必ずしも系統とは相関していない場合があり,独立して複数回生じてきたことが示唆された.精度の高い分子系統解析を行うために含める予定であったCOI領域についても,設計したプライマーが一部分類群については有効であることが確かめられ,配列データの取得も開始した.腕の分岐のパターンがどのように進化したのかをより詳しく理解するために,腕骨の形態を3次元的に調べるためのX線CTスキャンによる予備的な観察を実施し,次年度以降には本格的な分析にとりかかれるようにするための準備を行った
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