研究概要 |
本研究の目的は,従来,NMRによるタンパク質主鎖連鎖帰属法において必須であったアミド水素の化学シフトに依存しない主鎖連鎖帰属法および立体構造解析法を開発することである 当該年度の研究計画は,アミド水素に依存しないタンパク質主鎖連鎖帰属スキームを開発することであった.計画のとおり,新規パルスシークエンス3D HCA(N)CO法を開発した.この測定法の感度および分解能については,標準タンパク質試料を重水溶媒に溶解し,さらに重水素デカップルを併用することにより,他の既発表測定法と遜色ないことを確認した.実際にGB1タンパク質を用いて,他の測定法(HCACO, HCAN, HCA(CO)N)と併用することでタンパク質主鎖の連鎖帰属が確実におこなえる手法を確立した.さらに,次年度以降の研究計画に前倒しで取り組んだ.重水溶媒中で得たNOESYスペクトル由来の距離制限を用いて立体構造計算をおこない,軽水溶媒由来の立体構造と比較したところ,ほぼ同一の立体構造が得られ,また,構造収束の指標(主鎖rmsd)は,前者が0.40A,後者が0.48Aであった.以上の結果から,重水溶媒中におけるタンパク質の主鎖連鎖帰属および立体構造解析は,従来型の軽水溶媒中での解析と同程度の精度であることがわかった.ここで開発した測定・解析手法は,酸性~中性域にて溶解度の低いタンパク質の立体構造解析に有効である
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