研究概要 |
研究計画調書に記載したとおり,報告者は,NMR法において主鎖アミド水素に由来しないタンパク質立体構造解析法を開発し,さらにGB1タンパク質について立体構造解析をおこない,アミド水素由来の距離制限を用いなくとも,じゅうぶん高精度の立体構造が得られることを実証した.この研究成果は原著論文(Ogura et a1., Journal of Biomolecular NMR 47, 243-248, 2010)として発表済みである. 本研究は当初計画どおり完了したため,24年度は本研究の成果をさらに発展させ,本手法をタンパク質と相互作用するペプチドの構造およびダイナミクス解析に応用することにした. Grb2タンパク質のSH3ドメインはプロリンを多く含む10残基ペプチド(PRR)を認識・結合することで,細胞内シグナル伝達を担う機能をもっている.すでにSH3-PRR複合体の立体構造はNMR法およびX線結晶構造解析法によって解析されているが,PRRがSH3ドメインと結合していない状態での立体構造,および,SH3に結合する際の詳細なメカニズムは不明であった.そこで,報告者は,本研究で開発したNMR測定および解析法を適用し,PRRがフリー状態においてもヘリックス構造を有していることをあきらかにした.PRRは主鎖アミド水素含量が極端に少ないため,報告者の開発した手法は非常に有効であった.さらに,NMR緩和分散法により,PRRがSH3ドメインに結合する際にどの領域がコアとなっているかがわかった.
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