研究課題/領域番号 |
22570110
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 治夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (40292726)
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キーワード | 膜蛋白質 / X線結晶解析 / 膜受容体 / ホルモン / 大量発現 |
研究概要 |
本研究の最終的な目標は、血圧・体液バランスの維持に不可欠な心房性利尿ペプチド(ANP)受容体に代表される、グアニル酸シクラーゼ(GCase)受容体のX線結晶解析を通じ、GCase受容体が「ホルモンを認識する機構」と、「膜を隔ててシグナルを伝達する機構」の構造的解明を行うことである。平成23年度も22年度に引き続き、(1)ANP受容体の細胞外ホルモン結合ドメインとホルモン複合体の高分解能での構造解析、(2)GC-B受容体の機能解析、(3)全長ANP受容体の発現系の構築、の3項目に重点を置き、研究を行った。(1)では、これまでに収集した様々なリガンドとの複合体のデータを組み合わせることで、結合したペプチドのモデリングを正確に行う手法を開発することができた。本手法は、モデリングが困難なペプチド複合体の結晶構造解析を行う際に有効な手法と考えられ、-・般性も多いにあると考えられる。また、当初申請書に記載していなかった、ANPが2量体の構造をとるとされるβANPとの複合体結晶も得ることができた。βANPの複合体構造ではANP複合体構造に比ベホルモンを挟み込む受容体モノマー間の幅が大きくなると予想されるため、受容体が「ホルモンを認識するメカニズム」を考える上でも有機儀な構造であると考えられる。分解能は4Å程度とまだ不十分であるが、平成24年度に構造決定を行う予定である。(2)では、GC-B受容体がリガンドを選別するメカニズムの-一端を解明できた。この結果に関しては現在投稿準備中である。また、GC-B受容体の結晶化にも着手している。(3)では、全長ANP受容体の発現ウィルスを用いた発現系の構築に成功した。現在、最適界面活性剤の選択等の大量精製に向けた基礎実験を行っている。引き続き研究を行い、「膜を隔ててシグナルを伝達する機構」の構造的解明につなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的のうち、GCase受容体が「ホルモンを認識する機構」は当初の計画以上の進展を見せている。これは、申請書の時点では予期しなかったリガンドとの複合体構造を多数得られていることからも明らかである。今後も可能な限りのリガンド複合体の結晶構造解析を行い、より深い理解へと繋げる予定である。受容体が「膜を隔ててシグナルを伝達する機構」については、大量発現にはおおむね成功しており、大量精製の予備実験を行っている最中であり、おおむね順調に進呈していると思われる。以上のことから、現在の総合的な達成度は(2)の「おおむね順調に進展している」が妥当であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、ANP受容体細胞外リガンド結合ドメインと様々なリガンドとの複合体構造を得ることができた。これによりGCase受容体が「ホルモンを認識する機構」の理解に大きく進展があった。まずはこの成果を投稿論文としてまとめる。現在投稿準備中であるGC-B受容体の機能解析の論文も投稿を急ぐ。実験では全長ANP受容体の大量精製に全力を投じる。精製に成功したならば、機能解析を進めると同時に結晶化へも取り組む。
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