研究課題
申請者らは動物の成育に必須なエネルギーおよび栄養獲得の過程において働く膵臓消化酵素が、糖タンパク質の糖鎖に対する特異的結合性を有し、糖鎖結合により酵素活性が調節されることを発見した。本研究では、各膵臓酵素に対する膵臓内および腸管内の複合糖質レセプターを同定し、酵素と複合糖質レセプターとの相互作用が、膵臓外分泌と栄養消化・吸収過程において果たす機能を解明することを目的とした。十二指腸組織を用いたブタ膵α-アミラーゼ(PPA)免疫組織染色では、PPAは糖特異的に刷子縁(BBM)に結合していることが示された。PPAカラムに結合しMeα-Manで溶出される画分のタンパク質同定を行ったところ、スクラーゼーイソマルターゼ(SI)とNa+-Glc共輸送体1(SGLT1)等のGlcの消化・吸収に関与する膜型糖タンパク質が示唆された。PPAのデンプン分解活性は特異糖、N型糖タンパク質、またはBBMによって増強し、またSIのマルトース分解活性はPPAにより増強された。一方、SGLT1の細胞内Glc輸送活性はPPAにより抑制され、Man特異的レクチンの添加によりPPAの結合を阻害することによって回復した。本研究からPPAは、(1)N-型糖鎖への結合を介して十二指腸BBMに局在し、(2)BBMの各レセプターの活性に影響を与え、腸管腔でのデンプン分解とGlc生成を促進する一方、腸細胞へのGlc輸送を抑制することが明らかになった。
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