核内受容体PPAR/FXRと脂肪酸結合タンパク質FABP (FABP5/FABP6) のクロストーク機構の破綻に起因する癌の増殖・転移促進機構の解明を目的とし、以下の研究成果を得た。 1. 核内受容体PPARシグナルにおけるFABP5の機能解析:高発現したFABP5による転移能獲得機構を解析し、FABP5が核内でp68/DDX5と特異的に相互作用し、FABP5依存的な癌の増殖・転移促進関連遺伝子群の転写を活性化している可能性が示唆された。今後、FABP5による転移能獲得におけるp68機能解析が必須である。また、脂肪酸依存的なFABP5の核移行は、脂肪酸をリガンドとするPPARシグナルの活性化につながる可能性を示唆しており、FABP5によって活性化される標的遺伝子を同定する必要がある。 2. 核内受容体 FXRシグナルにおけるFABP6/I-BABPの機能解析:FXR シグナルによって活性化されている新規 miRNAおよび、これらの miRNAによって発現が抑制される標的遺伝子を同定した。今後、FXRに応答する miRNA の機能解析、大腸癌における FXRおよび FABP6 の機能を解析する必要がある。また、FABP6 のアイソフォーム (FABP6-L/I-BABP-L) が、抗アポトーシス活性を有することがわかった。今後、FABP6との機能的差異の発現機構について検証する。一方、高発現した FABP6 と特異的に相互作用するタンパク質の同定を試みたが、まだ同定できていないため、今後の課題とする。 3. 悪性腫瘍細胞におけるFABP5遺伝子の特異的転写活性化機構の解析:ヒト悪性前立腺癌細胞 PC-3と正常前立腺細胞 PNT-2におけるFABP5遺伝子のDNAメチル化解析の結果、FABP5遺伝子はPC-3においてより脱DNAメチル化傾向にあった。
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