研究概要 |
23年度は封入体として発現したNeclの大希釈法によるrefoldingの条件を決定し、微小結晶得ることに成功した。しかし、収量が低いことと、refoldingした試料の構造が本来の構造と部分的に異なるという事象がネクチンの構造解析で明らかになったため(未発表データ)、今年度は可溶性画分として試料を得るため、昆虫細胞を利用した大量発現系構築を行った。Necl-1,2,3,4について発現を確認することができた。Neclはいずれも分子量が34 kDa付近であるが、SDS-PAGEで示唆される分子量は本来の分子量よりも大きく、しかも種類によって異なっていた。これは各蛋白質の糖鎖修飾状況の差を反映していると考えられる。 Neclの中で一番糖鎖修飾部位が少ないNecl-1について結晶化を試みた。昆虫細胞にウイルスを感染させて72時間後に回収した培養液に分泌されているNecl-1をNi-NTA アガロースカラムで回収し、更に2種類の陰イオン交換カラム(Htrap-Q, Mono-Q)で精製した。第二世代ウイルス液を培養液の1/100 量添加する条件で、培養液1Lあたり、5 mg程度の精製蛋白質を得ることが出来た。これを25 mg/mlにまで濃縮し、種々の結晶化キットを用いて23°Cでスクリーニングを行ったところ、複数の条件で、菱形の微小結晶を得ることに成功した。放射光施設においてX線回折実験を行ったが、回折点を観測することはできなかった。今後、結晶化条件を最適化することにより結晶サイズ、結晶性を改善していく予定である。Necl-2,3,4についても、順次精製結晶化を遂行する予定である。 ネクチン2の結晶構造に関してACA2012において発表を行った。さらに昆虫細胞系を利用し、ネクチン3の構造解析にも成功した。そして、我々が解析したネクチン1,2,3の構造比較を行い、結果を報告した。
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